2013 Fiscal Year Annual Research Report
天文観測用高感度CMOSセンサの開発
Publicly Offered Research
Project Area | New development in astrophysics through multimessenger observations of gravitational wave sources |
Project/Area Number |
25103502
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒向 重行 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90533563)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | CMOSセンサ / 可視光 / 高速 / 広視野 / 高温駆動 |
Research Abstract |
次世代の可視光広域サーベイ天文学では、重力波イベントに代表される突発の短時間変動現象への対応と、センサの大面積化にともなう装置の大型化への対応が課題となる。本研究では、高速読み出しと高温駆動を実現する天文用CMOSセンサを開発することでこれらの課題の解決をめざす。センサの開発に際しては特に読み出しノイズと暗電流の低減に注力する。これにより高温(常温付近)で駆動しても高感度が得られるセンサを実現する。高温駆動センサは冷凍機の小型化、ひいては装置の小型化につながる。また、CMOSセンサの大フォーマット化も実施する。本研究で開発するCMOSセンサを搭載した観測装置が完成すれば、未開拓分野である可視光の高速広視野天文学を世界に先駆けて開始することが可能になる。 研究の初年度である平成25年度には、高感度CMOSセンサを評価するための試験ベンチを製作して、実験室にてセンサの性能評価を実施した。この評価結果をセンサメーカーにフィードバックすることでより高性能なセンサを開発した。こうした開発サイクルを実施することで、天文観測に適した性能を持つCMOSセンサの実現に成功した。次に、このセンサと試験ベンチを東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に搭載して性能評価試験を実施した。結果、開発した高感度CMOSセンサが科学観測で用いるのに十分な性能を持つことを確認した。この結果を受け、このセンサを搭載した科学観測用カメラの筐体と読み出し回路の設計を実施した。研究次年度には筐体と読み出し回路を製作した後、本センサを1チップ搭載した広視野CMOSカメラのプロトタイプ機を開発する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請では(1)性能評価用試験ベンチの制作、(2)試験ベンチを用いた高感度CMOSセンサの性能評価、(3)性能評価の結果をセンサメーカーへフィードバック、(4)センサメーカーがセンサを改良し、我々が(2)の手法で性能評価、を実施すると記載した。この計画に沿って研究を進める中で、(1)はセンサメーカーが保有する機器を代用することでコストの削減を行った。その後、センサの製造・評価・改修のサイクル(2,3,4)により天文観測に適した性能を持つセンサの実現に成功した。当初の計画よりも進展があったため、次年度に実施する予定であった、センサを望遠鏡に搭載しての試験観測を前倒して実施した。試験観測の結果も良好であったため、さらに、次年度に実施予定だったセンサを1チップ用いた広視野CMOSカメラのプロトタイプ機の筐体と読み出し回路の設計を実施した。筐体の設計はメカ設計の業者に委託した。読み出し回路の設計は申請者のグループが担当した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の次年度(平成26年度)は、初年度に実施したCMOSセンサの評価結果を元に、CMOSセンサの設計の変更と再製作を実施する(センサメーカーが担当)。初年度はセンサメーカが開発した読み出し回路を用いてセンサの評価を行ったが、今年度はこれを天文観測に最適化したシステムに改修して評価を行う。初年度に設計した筐体を製作し、開発した読み出し回路と1チップのセンサを搭載することで、広視野CMOSカメラのプロトタイプ機を開発する。このカメラシステムを東京大学木曽観測所のシュミット望遠鏡に搭載して試験観測を行うことで、天文観測における本カメラシステムの性能評価を実施する予定である。
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