2013 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール-磁場中性子星合体に関する数値的研究
Publicly Offered Research
Project Area | New development in astrophysics through multimessenger observations of gravitational wave sources |
Project/Area Number |
25103510
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木内 建太 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (40514196)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 重力波 / 数値相対論 / ガンマ線バースト |
Research Abstract |
ブラックホールと中性子星からなる二重連星の合体は、地上型重力波干渉計の有望なターゲットの一つであるとともにショートガンマ線バースト駆動源の有力な候補の一つである。また、合体過程で放出された中性子星物質の中で生成されるr過程元素が放射性崩壊を起こすと近赤外から可視光にわたる波長で電磁波放射をする可能性が理論的に示唆されていた。昨年報告されたショートガンマ線バーストGRB130603Bに付随したバースト9日後における近赤外線帯域での増光は、上述のモデルで説明可能であることが指摘されている。 このような現状を鑑み、本研究ではブラックホール―中性子星連星合体の精緻なモデル化を数値相対論の枠組みで行った。特に中性子星が元来保持する磁場が合体の過程でどのように増幅されるかを調べ、重力波放射や上述の物質放出に影響を及ぼすかを明らかにすることを目標とする。具体的にはブラックホールスピン0.75、ブラックホール―中性子星質量比4、中性子星質量1.35太陽質量に設定した数値相対論―磁気流体シミュレーションを実行した。核密度状態方程式は変分原理から導かれるAkmal-Pandharipande-Ravenhall、相対論的平均場近似に基づくH4の2種類を採用し、中性子星初期磁場を10の14乗、15乗、16乗と変え系統的サーチを行った。以下に結果をまとめる。 シミュレーションの結果、ブラックホールによる潮汐破壊で形成された降着円盤内で磁場が増幅することが分かった。この磁場増幅は降着円盤表面で起こるケルビン―ヘルムホルツ不安定性に起因する。さらに増幅された磁場が磁気回転不安定性や磁気浮力不安定性を連鎖的に起こすことで乱流渦が生成される。さらに乱流粘性により角運動量とエネルギーが外側に輸送され、磁気円盤風が駆動する事がわかった。以上が2013年度行った研究実績の概要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標はブラックホール―磁場中性子星連星合体の現実的描像を明らかにすることである。ブラックホール―磁場中性子星連星合体の数値相対論―磁気流体シミュレーションを実行できる研究グループは世界的にも数少なく、合体過程で形成される強く磁化した降着円盤から駆動される円盤風を報告した研究グループはまだいない。 我々の研究結果によると円盤風として放出される物質の総量は最大約0.03太陽質量にも及び、潮汐破壊時に放出される物質の量を凌駕する。この結果が意味する処は、GRB130603Bの近赤外線増光を説明するモデルに変更が生じるということである。以上の結果をまとめた論文を現在執筆中である。よって研究はおおむね順調に進行していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年度の研究結果がどの程度一般的であるかを調べるために、さらに系統的なサーチを行う。具体的にはブラックホールのスピンや質量比を変えたシミュレーションを行い、前年度開発したデータ解析ツールを用いて同様の解析を行う。 基本的には現在までの研究推進方法と変わらない。
|
Research Products
(9 results)