2013 Fiscal Year Annual Research Report
コンパクト天体連星合体における質量放出とR過程元素合成による電磁波放射
Publicly Offered Research
Project Area | New development in astrophysics through multimessenger observations of gravitational wave sources |
Project/Area Number |
25103512
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
関口 雄一郎 京都大学, 基礎物理学研究所, 研究員 (50531779)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 理論天文学 / 数値相対論 / 元素合成 / 重力波 |
Research Abstract |
連星中性子星合体のニュートリノ輻射流体シミュレーションを行い、合体時に放出される物質の熱力学状態とその進化を明らかにした。さらに、得られたデータを背景物質場として、r-過程元素合成計算を共同で行い、最近の原子核理論及び中性子星観測が示唆する、比較的「柔らかい」核物質状態方程式を用いた場合に、太陽組成が示すr-過程元素パターンが得られることを明らかにした。 鉄族より重い重元素の起源は未解明であるが、その一つの候補天体が連星中性子星の合体である。従来の研究では連星中性子星の合体ですべての重元素の機嫌を説明するのは難しいとされていたが、これは、一般相対論、ニュートリノ(弱い相互作用)、核物質状態方程式に関する不十分な取扱いに基づいたものであった。そこで本研究ではこれらを包括的に組み入れた研究を行い、「重元素の起源が連星中性子星合体である」とする仮説の再検証を試みた。「柔らかい」状態方程式を採用した場合には、中性子星合体時に衝撃波加熱によって温度が上昇し、その結果として陽電子が生成され、陽電子が中性子に吸収される弱い相互作用によって、電子モル分率が上昇し、放出物質中の電子モル分率パターンは従来の研究とまったく異なったものになる。その結果、従来の研究では難しいとされていた重元素が合成され、太陽組成が示す重元素パターンが自然に説明されることを明らかにした。興味深いことに、太陽組成パターンを再現する「柔らかい」状態方程式は、最近の原子核理論及び中性子星観測が示唆するものに合致する。 さらに、重力波の電磁波対応天体の研究に向けて、得られたr-過程元素パターンから崩壊熱を計算した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、数値相対論シミュレーションで得られたデータを背景として元素合成計算を行う、一連の流れを確立したことに加えて、関連する周辺分野でもいくつかの研究成果をあげることができた。 また、研究遂行上必要となる数値相対論的輻射流体シミュレーションコードに関して、当初の計画を超える数の状態方程式の組み込みに成功し、より広範な観点から研究を進めていく琴ができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究概要で述べた成果は大変興味深いものの、連星中性子星のパラメータ、状態方程式依存性など、より詳細に調べていく必要がある。特に、核物質状態方程式に関しては未だ理論的不定性も大きいので、様々な状態方程式を用いてシミュレーションを行い、その結果としてr-過程元素合成がどのように影響を受けるかを調べていくことが電磁波対応天体の研究の観点からも重要となる。幸いにして、本年度の研究において当初の計画を超える数の状態方程式を組み込むことができたので、これを用いて研究を進めていきたい。
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