2013 Fiscal Year Annual Research Report
スピンポンプによるトポロジカル絶縁体へのスピン流注入と逆スピンホール効果
Publicly Offered Research
Project Area | Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries |
Project/Area Number |
25103702
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩見 雄毅 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10633969)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピンポンピング / トポロジカル絶縁体 / スピン-電荷変換 |
Research Abstract |
本研究では、強磁性体を接合したトポロジカル絶縁体において、スピンポンピング法を用いてスピン注入によるスピン-電荷変換現象の研究を行う。トポロジカル絶縁体は、内部が絶縁体である一方表面に金属状態を有するため、従来薄膜試料を用いて研究されてきたスピン注入実験をバルク結晶で行うことができると期待される。さらに、トポロジカル表面状態においては、ヘリカルなスピン偏極をもったディラック電子が伝導を担っており、これまで知られていた逆スピンホール効果とは異なった機構でスピン-電荷変換現象が起きるはずである。今年度の研究では、実際に、低温で表面状態の伝導が主要になる(Bi,Sb)2(Te,Se)3 及びSnドープしたBi2Te2Seバルク単結晶において、パーマロイ(強磁性金属)を接合しスピン注入実験を行った。結果として、バルク試料であるに関わらず、表面状態の伝導が主要になる低温領域において、表面状態におけるスピン-電荷変換現象由来である磁場に対して奇の対称性を持つ電圧信号を観測した。その際、パーマロイのギルバート減衰定数も増大しており、トポロジカル表面状態へのスピン注入が起きていることがわかる。さらに、低温まで金属的なバルク伝導が主要なBi2Se3では磁場に対して奇の電圧信号は観測されないことを示し、表面伝導が主要なトポロジカル絶縁体で観測された電圧信号が表面状態でのスピン-電荷変換現象に由来することを確認した。観測されたスピン-電荷変換現象は、表面状態において、電子のスピン方向と伝導方向が一対一に対応していることに起源を持ち、スピン-軌道相互作用を起源とする逆スピンホール効果とは区別される現象である。実験結果と理論的モデルを用いた考察を組み合わせ、スピン-電荷変換現象の解析を行い、論文としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に計画していた研究に関しては、ほぼすべて実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度観測した表面状態におけるスピン-電荷変換現象の理解の深化と制御を目指して研究を進めていく。n型とp型のトポロジカル表面状態では、スピン-電荷変換による電圧信号の符号が逆になるはずであり、化学ポテンシャルの制御による電圧信号の大きさ・符号制御を狙う。また、他のトポロジカル絶縁体物質での展開研究も進める。スピン-電荷変換による電圧信号の制御、室温での観測、高効率化など、将来的なスピントロニクス・デバイス応用も考慮に入れた広い視野で重要な成果の達成をめざす。
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Research Products
(3 results)