2013 Fiscal Year Annual Research Report
カイラルp波超流動体の固有角運動量とエッジ流の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries |
Project/Area Number |
25103706
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
押川 正毅 東京大学, 物性研究所, 教授 (50262043)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カイラル超流動体 / エッジ状態 / 固有角運動量のパラドックス / 超伝導 / 超流動 / 国際研究者交流 アメリカ合衆国 フランス |
Research Abstract |
フェルミ粒子の対形成によるカイラル超流動体の全角運動量の問題はこれまで数十年にわたって研究されてきたが、未だに決定的な解決を見ていない。本研究では、回転対称なポテンシャル中のカイラル超流動体についてBogoliubov-de Gennes方程式をあらわに解くことによって、まず理想的な状況下での全角運動量の解明を目指す。その際に、Bogoliubov-de Gennes方程式の持つ保存量に注意をはらう。 まず、最も簡単な、回転対称なポテンシャル中のp+ip波カイラル超流動体について上記のような研究を行った。その結果、ペアリング振幅が小さくとも、熱力学的極限では全角運動量は粒子数の厳密に1/2の値に漸近することがわかった。これは、全てのフェルミ粒子がクーパー対の形成に寄与するという物理的描像を支持し、最近の関連する報告とも一致する。一方、d+id波等の高次のカイラル超流動体についても同様の計算を行った結果、全角運動量が粒子数に比べ非常に小さくなるという予想外の結果を得た。 強く束縛された対のボース・アインシュタイン凝縮の極限では、全てのフェルミ粒子がクーパー対の形成を通じて角運動量に寄与すると考えられる。この極限からのスペクトラルフローを考えることで、系の全角運動量は系の周縁部に出現するエッジ状態の構造と密接な関係があることを見出した。そして、このエッジ状態の構造をもとに、p+ip波カイラル超流動体については全角運動量が粒子数の1/2になる一方、高次のカイラル超流動体では全角運動量がゼロになることを準古典理論の範囲で導いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、最も簡単なp+ip波カイラル超流動体に限定して全角運動量の問題を解明する予定であった。しかし、本年度にd+id波等の高次のカイラル超流動体についても調べて見た結果、p+ipと高次のカイラル超流動体では全角運動量の挙動が全く異なることがわかった。この差異はエッジ状態の構造の違いによって理解することができる。このように、高次のカイラル超流動体を考えることによって、元々の目的であったp+ip波カイラル超流動体の全角運動量の問題についてもより深い理解を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
概念的な理解として、カイラル超流動体の持つ角運動量を「固有角運動量」とみなすことができるかどうかを、これまでの成果を踏まえて検討したい。 また、現実の系に適応するため、ポテンシャルの回転対称性を破った場合の効果や、系の端における不純物や不完全反射等の効果について研究を進める予定である。
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Research Products
(9 results)