2013 Fiscal Year Annual Research Report
スピン三重項超伝導体UPt3の準粒子低エネルギー励起構造の解明
Publicly Offered Research
| Project Area | Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries |
|---|
| Project/Area Number |
25103708
|
|---|
| Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
| Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
|---|
Principal Investigator |
井澤 公一 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (90302637)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
| Keywords | 物性実験 / 低温物性 / スピン三重項超伝導 / トポロジカル超伝導 |
|---|
| Research Abstract |
本研究では，トポロジカル超伝導体の有力候補であるスピン三重項超伝導体UPt3の多重超伝導各相における準粒子低エネルギー励起構造の詳細を明らかにし，スピン三重項超伝導の一般的理解を深めることを目的としている．平成25年度は，超伝導準粒子状態を明らかにするため，これまでほとんど研究例のない熱ホール伝導率の測定を試みた．そして装置を極限まで最適化することにより，熱ホール効果で生じる微小な温度変化をとらえることに成功した．その結果，常伝導状態で極めて小さい値を示していた熱ホール係数が，超伝導転移温度よりも十分低温で急激に増加することがわかった．常伝導状態で熱ホール係数が極めて小さいのはUPt3が補償金属であるためであるが，それが超伝導状態で増加するということは超伝導状態においては準粒子がホール的な性格をもつことを示している．これは超伝導ギャップに存在するノードがホール面に走っていることを強く示唆している．そこで実際のフェルミ面との比較・考察により，逆格子空間のどの部分にラインノードが存在するかをかなり絞り込むことに成功した．この成果は，実際のフェルミ面とギャップ構造を対応させるというこれまで困難であった議論を可能にするものであり，超伝導発現機構の解明に重要な役割を果たすことが期待される．一方，これと並行に超音波測定システムの構築にも取り組んだ．測定法として位相比較法を用いたシステムの構築に成功した．その際，フィードバック機構を工夫することで非常に小さな単結晶に対しても6桁以上の精度で結晶中の音速が測定可能であることをUPt3の弾性率C11の温度依存性の測定から確認した．これにより平成26年度に予定している多重超伝導各相における渦糸格子弾性の変化を調べる準備が整った．
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は，計画していた熱ホール伝導率測定および超音波測定システム構築に取り組んだ．その結果，熱ホール伝導率測定では，予想通り微小な温度変化を測定する困難な実験であったが，上述の通り装置の最適化を行うことにより目的とした信号をとらえることに成功し，熱ホール係数からUPt3の超伝導対称性に関する重要な知見を得ることができた．また，超音波測定システムについても一からシステムを構築し，改良を加えた結果，想定した性能が出ていることを確認した．このように計画していた2つの取り組みはいずれも計画通りの成果が得られており，順調に研究は進展している．
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は，計画通り研究を進める．まず，完成した超音波測定システムを用い，渦糸格子の弾性率が各超伝導相においてどのように変化するかを調べ，多重超伝導状態の理解を進めたい．また，それと並行して圧力下電気抵抗測定を行い，UPt3の温度ー磁場ー圧力相図の詳細，特に磁場に関する異方性をしらべる．これにより常圧で見られている上部臨界磁場の抑制の起源を明らかにしたい．そして得られた知見からUPt3における超伝導発現機構およびトポロジカルな観点からの超伝導状態の理解を目指す．．
|
Research Products
(8 results)
