2013 Fiscal Year Annual Research Report
多軌道モデルに基づくパリティがない超伝導の微視的理論
Publicly Offered Research
Project Area | Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries |
Project/Area Number |
25103711
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
柳瀬 陽一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70332575)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パリティがない超伝導 / 多軌道型超伝導 |
Research Abstract |
2004年に大友らがSrTiO3/LaAlO3界面を用いた2次元電子系の形成に成功したことは、驚きを持って迎えられました。GaAs等の2次元電子系と比べて1ケタ以上大きな電子密度が実現されたからです。そして、上野らがイオン液体を用いたSrTiO3表面の2次元電子系を作成し、電子密度を電界によって人工的に制御することも可能になりました。この点は基礎研究と応用研究の両面で大きな発展をもたらすと期待されています。しかし、応用に向けた研究が進む一方で基礎物理の観点から多くの不思議な現象が謎として残されていました。その一つが界面に特有のラシュバスピン軌道相互作用の電子密度依存性です。これまでの理論で用いられた仮定とは逆の依存性が実験的に示されたことは、大変大きな問題でした。その実験結果は超伝導の上部臨界磁場の測定によるものでしたが、上部臨界磁場の値が超伝導分野で良く知られるパウリ極限を遥かに超えることも不思議でした。 25年度に我々が行った研究により、これらの問題を系統的に解決することができました。キーポイントは、多軌道モデルを用いてSrTiO3界面・表面の2次元電子状態を記述したことでした。それ以前の理論研究では、ラシュバスピン軌道相互作用を現象論的に仮定した単一軌道モデルが用いられてきました。これは低密度の半導体では正当化される仮定です。しかし、SrTiO3界面2次元電子系の最も重要な特徴は高い電子密度が実現されることです。その場合には、電子状態に軌道自由度が現れます。我々はこの点に着目し、第一原理バンド計算の結果を再現する3軌道モデルを構成しました。その結果として、実験で得られたラシュバスピン軌道相互作用の電子密度依存性を自然に再現することが出来ました。さらに、パウリ極限を超える上部臨界磁場の起源が「空間反転対称性がない多軌道系に特有の擬1次元超伝導」にあることを見いだしました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間反転対称性がない超伝導の理論研究を多軌道モデルに基づいて行う本研究課題により、軌道自由度と空間反転対称性の欠如の協奏効果に由来するエキゾチック超伝導相が見つかった。この研究は、世界中で広く行われている界面2次元電子系の研究において軌道自由度の重要性を初めて示したものでもあり、本研究課題の進展はおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に行った研究により、SrTiO3界面の超伝導状態において異常な常磁性対破壊効果が存在することが分かった。今後はこの研究をさらに進展させ、高磁場領域における新奇超伝導相の発見を目指す。特に、新種のFFLO超伝導である軌道依存型複素ストライプ相の位相構造を決定し、実験的な検証を提案する。 また、SrTiO3界面における磁性研究を開始する。特に、LS結合と多軌道型ラシュバスピン軌道相互作用の競合による特異なカイラル磁性の可能性を探索し、その量子臨界性を明らかにする。 これらの研究により、SrTiO3界面における磁性・超伝導・輸送現象の包括的な理解が完成すると期待される。
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Research Products
(16 results)