2013 Fiscal Year Annual Research Report
超格子バンドエンジニアリングによるトポロジカル絶縁体の実現
Publicly Offered Research
Project Area | Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries |
Project/Area Number |
25103724
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松野 丈夫 独立行政法人理化学研究所, 石橋極微デバイス工学研究室, 専任研究員 (00443028)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / スピン・軌道相互作用 / 電子相関 / パルスレーザー堆積法 / イリジウム酸化物 / エピタキシャル薄膜 |
Research Abstract |
イリジウム酸化物に代表される5d電子系のスピン‐軌道相互作用は約0.5 eVと大きく、かつ電子相関とも競合するという特徴を持つ。そのため相関の効いたトポロジカル絶縁体の候補と考えられており、中でも、ペロブスカイト酸化物SrIrO3を(111)面上に2層ずつ積層することで形成されるハニカム格子が理論的に有望と予測されている。この予測は人工超格子によるバンド構造制御、すなわち超格子バンドエンジニアリングにより初めて実現が可能であり、本研究ではパルスレーザー堆積法によりこれに取り組んだ。 (111)配向SrIrO3薄膜を合成する際の問題は、非常に幅広い温度・酸素分圧領域において6H相が形成されることである。6H相はIrO6八面体からなる構造でありペロブスカイト相とも多くの共通点を持つが、(111)方向の積層順序が異なる。バルクではペロブスカイト相が高圧安定相、6H相に由来する単斜相が常圧安定相であることから、(111)配向と整合性の高く熱力学的に安定な6H相が(111)面上薄膜において形成されることは避けがたい。SrTiO3(111)基板上でも超格子[(SrIrO3)2、(SrTiO3)2]を作成することによりペロブスカイト相が安定化するが、6H相の混入によりIrとTiを完全に秩序化させることは困難である。本年度は、6H相ではトレランスファクターが1より大きいことに着目し、固溶体(Sr,Ca)IrO3を作製しAサイトイオン半径を減少させることによりペロブスカイト相が安定化される可能性を研究した。固溶体Sr0.5Ca0.5IrO3をSrTiO3(111)上に作製し、実際にペロブスカイト相を観測することに成功した。さらにSr0.5Ca0.5IrO3とSrTiO3を異なる基板温度・酸素分圧で製膜することにより[(Sr0.5Ca0.5IrO3)2、(SrTiO3)2]超格子を作製し、[(SrIrO3)2、(SrTiO3)2]よりもはるかに強い超格子ピークを観測した。薄膜を用いたイリジウム酸化物の配向・結晶構造制御により、理論で予測される構造の実現に向けて大きく前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所期の目的であるトポロジカル絶縁体には到達していないが、SrをCaで部分固溶させることにより理論で予測されている構造の実現に大きく前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
超格子におけるIrとTiのより完全な秩序化を目指し、透過電子顕微鏡像を確認しつつ製膜条件の最適化を推進する。並行して、得られた超格子薄膜の基本物性の測定、さらには各種分光測定との組み合わせにより、イリジウム酸化物の超格子薄膜においてトポロジカル絶縁体を探索する。
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