2013 Fiscal Year Annual Research Report
上皮成長因子受容体誘導シグナル伝達系の動作原理、制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Molecular Robots equipped with sensors and intelligence |
Project/Area Number |
25104525
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
中茎 隆 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (30435664)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 制御系設計 / 安定性解析 / フィードバック制御 / 細胞内シグナル伝達系 |
Research Abstract |
生体分子のみで構築された分子ロボットの動きを制御する問題は,制御工学におけるモーションコントロールである.しかし,分子ロボットでは信号処理をDNAによる化学反応系で実現する必要があるため,センサ情報をもとにゲルアクチュエータなどの駆動源に対する制御信号を生成する制御器も化学反応系で実装する必要がある.この問題を解決するため,平成25年度は「細胞内シグナル伝達系の動作原理と制御機構」に関して研究を進め,次の2点に関して一定の成果を得ることができた. (1) フィードバック機構を有する生化学反応系の分岐解析と安定性解析 フィードバック機構を有する生化学反応系の例として,先行研究において乳癌細胞株MCF7を用いて構築されたMAPKカスケード、転写因子活性化、転写制御、翻訳機構、転写フィードバックを全て含む確度の高い時空間モデル(以下、乳癌モデル)を採用した。この数理モデルには、転写を介した負のフィードバック機構が存在するため、パラメータ依存的に定常状態でリミットサイクルを引き起こす可能性がある。そこで、分岐解析を行い実際にある条件下でHopf分岐が生じ、平衡点が不安定化することでリミットサイクルが発生することを示した。 これらの結果を発展させ、負のフィードバックを有する生化学反応系の安定性解析を現在実施している。 (2) 生化学反応系で実現されるPID制御器に関する検討 生化学反応系でPID制御器に類似した制御計算を行うためには、その基本要素である積分演算、微分演算を確立する必要がある。今年度は第一段階として、既存のシグナル伝達系に積分器や微分器に相当する演算器がないかを調べ、乳癌モデルのサブシステムが条件によって積分器や微分器に類似の動作をすることを発見した。その理論的な裏付けについて現在検討を続けている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の当初は、平成25年度に「細胞膜上での時空間動態に関する研究」、平成26年度に「細胞内シグナル伝達系の動作原理と制御機構に関する研究」を行う予定であったが、分子ロボティクスの領域会議や班会議で議論を深める中で順番を入れ替えて後者のテーマから取り組むことにした。これらテーマはそれぞれは独立しているため、研究の順番は影響がない。今年度の研究成果は、国際会議論文3本(査読有、内2本は査読中)、1本(査読無)、学会発表4件(口頭2件、ポスター2件)であり、学術論文も執筆中であるため、概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
「細胞内シグナル伝達系の動作原理と制御機構」に関して: 研究実績の概要(1)で示した分岐解析、安定性解析に関して学術論文としてまとめる。結果を広く周知するために国内外で口頭発表やポスター発表を行う予定である。 研究実績の概要(2)で示した制御系設計法に関しては、分子ロボティクス計画班(知能班)の研究者と引き続き連携を取りながら検討を続ける。得られた結果は適宜、国内外で発表を行う予定である。 「細胞膜上での時空間動態に関する研究」に関して: 膜受容体のダイナミクスに関する研究は、分子ロボットの感覚機能と関連が深いテーマであるため、分子ロボティクス計画班(感覚班)・公募班の研究者とも連携を取りながら、研究を進めて行く予定である。
|