2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分子粗視化シミュレーションによるソフトアクチュエータ材料の物性とダイナミクス
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Molecular Robots equipped with sensors and intelligence |
Project/Area Number |
25104528
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
森田 裕史 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (10466790)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | OCTA / 自励振動ゲル / DPD法 / 膨潤 / 収縮 |
Research Abstract |
本研究課題では、ゲルアクチュエータにおける高分子ゲルの材料設計を行うために、その作動のプロセスを扱うためのモデルとシミュレーションの研究を行う。具体的には、高分子の粗視化モデルを用いてソフトアクチュエータとしてのゲルにおけるモデル化を行い、シミュレーションを実施し、そのシミュレーションの結果からゲルを構成する高分子鎖と液体のダイナミクスについての解析を行う。2年間の研究期間の中の初年度は、散逸粒子動力学法(DPD法)を用いてゲルのモデル化を行ない、膨潤・収縮のダイナミクス、及びプロトタイプの自励振動ゲルのモデル化を行った。その具体的内容について以下に示す。 DPD鎖で構成された高分子構造と溶媒の2相分離した構造を作成し、高分子鎖を架橋密度が1.4になるように構造を作成する。架橋密度は、溶媒とポリマーの親和性を上げても膨潤率が2倍程度になるようにコントロールした。この構造を用いて、溶媒粒子と架橋高分子の各粒子との間の相互作用パラメータを変えることで、膨潤・収縮状態を記述する。結果として、収縮状態から膨潤状態へ、膨潤状態から収縮状態を記述するための相互作用パラメータを変えた際のダイナミクス計算、及び高速に伸張させたあとの膨潤など、従来stress-diffusion coupling 理論でしか表すことができなかった現象について、DPDモデルを用いて記述できることが示された。 さらに、次年度行う予定であった第1版の自励振動ゲルのモデルについても構築できた。具体的には、相互作用パラメータをsin型の関数で変化させ、そのパラメータの変化に対して、膨潤・収縮を繰り返す様子が観察でき、モデル化できた。この周期的な変化の速度依存性についても検討を行い、あまり早く変化させるとゲルの変形が追随できなくなることも示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
公募班の1年目に行う研究として、申請書には、次の2項目について、記載した。 1)テスト計算で行なっているモデルをベースに、散逸粒子動力学法(DPD法)を用いて、ゲルのモデル化を行なう。 2)1)で構築したモデルを用い、膨潤・収縮のダイナミクスについて、従来の理論モデルであるStress-diffusion coupling modelとの比較・検証を行い、我々のモデルの信頼性を確かめる。特に、ダイナミクスについて、Collective diffusion modelでは表せないが、Stress-diffusion coupling modelでは表すことができるダイナミクスについて、重点的に検証を行う。 これらに対して、DPD鎖を用いたゲルモデルの構築、及び膨潤・収縮のダイナミクスシミュレーションとStress-diffusion coupling modelの従来の結果との比較については、既に行い、DPDで構築したモデルがStress-diffusion coupling modelに則していることを示すことができた。 一方で、2年目以降に予定していた「自励振動する過程のシミュレーション」についても、既に第1版のシミュレーションを実施でき、当初の予定よりも早く研究が進展させることができた。特に自励振動ゲルモデルの結果については、実験との対応が課題となるが、現実に則した自励振動の反応過程に対応するモデルを構築しなくてはならないという問題点の洗い出しまで行うことができ、翌年度の研究に繋げることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後(2年目)の研究内容については、既に1年目に2年目の予定を早めて進めているが、引き続きの研究を進める。具体的には、1年目に検討した第1版の自励振動ゲルのモデルをリファインした第2版の自励振動ゲルのモデルの作成を行う。第2版のモデルでは、第1版で行っていた自励振動周期を仮想的にsin波で与える方式の代わりに、実験から得られる周期変化のデータを用いて、シミュレーションする予定である。実験から得られる周期変化として、金属錯体の酸化数変化による色の変化が考えられ、実際に観察される色の変化をシミュレーションに取り込み、その変化に沿ってシミュレーションすることとなる。このような方法を取り入れる理由として、元来、自励振動はBZ反応の周期に由来し、BZ反応は、反応拡散過程で記述できることから、反応と拡散がカップルした状態として表すことができる。色の変化には、この反応拡散過程の結果として現れたものと考えることができることから、この色の変化をそのまま取り入れることで、反応拡散過程まで含めたシミュレーションを実施することが可能ではないかと考えている。また、研究を推進するにあたって研究補助員を雇用して研究を進めるが、研究補助員と共に、シミュレーション研究を行う。 本研究は、新学術領域内での研究であることから、新学術領域において強く推奨されている領域内の共同研究についても検討を進めていきたいと考えている。上記の自励振動ゲルについても、計画班に入っておられる原雄介博士との研究であるが、この研究以外に、例えばゲル関係の研究について、今後も連携研究の可能性について検討していきたいと考えている。
|