2013 Fiscal Year Annual Research Report
コイルドコイル内の反応空間制御による人工銅蛋白質の機能制御に向けた理論設計
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Design through Computics: Complex Correlation and Non-equilibrium Dynamics |
Project/Area Number |
25104717
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鷹野 優 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (30403017)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人工蛋白質 / コイルドコイル / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
本年度は、(1)人工蛋白質の理論設計やふるまいの記述に必要と考えられる、蛋白質三次元構造の基本ブロックである二次構造を構成する相互作用を対象として調べた。(2)また4本鎖コイルドコイル蛋白質へのレッド銅部位導入およびその内部空間制御による安定化に成功した。 (1) αヘリックスやβシートなどの二次構造は、特異な機能に適した三次元構造を構成するために重要である。二次構造形成に関わる相互作用を定量的に見積もることは蛋白質の三次元構造形成原理の理解を深め、分子力場の開発にも役立つものである。代表的な二次構造であるαヘリックスと平行、反平行βシートの形成に関わる相互作用を、ポリアラニンからなるモデルペプチドを用いて、密度汎関数法 (B97D/6-31+G(d))、分子力学法 (AMBER99-SB)により調べた。αヘリックスとβシート形成に関わる水素結合の数と相互作用エネルギーとの関係から、βシートを形成する相互作用に関しては、分子力学法は密度汎関数法と同程度の結果を与えているものの、αヘリックスの形成に関しては、分子力場は、密度汎関数法に比べて相互作用を過剰評価していることが明らかとなった。 (2) 4本鎖コイルドコイル蛋白質へのブルー銅・パープル銅部位導入や理論計算によるモデリングで得られた知見をもとにして、コイルドコイル蛋白質へのレッド銅部位導入を実施した。レッド銅部位形成に重要なCys残基やHis残基がコイルドコイル内部に配置されるようにアミノ酸配列を考慮した蛋白質を新規設計した。設計された蛋白質を大腸菌により発現させたところ、レッド銅に特徴的な紫外-可視吸収スペクトルが得られた。しかしながら酸化のため赤色に呈色する寿命が短かった。そこで酸化を防ぐために内部空間のすきまをフェニルアラニンで埋めるように再設計を行ったところ、呈色の寿命が大幅にのびることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画としていたコイルドコイル内部の反応空間の特色に関して、人工レッド銅タンパク質の設計を通じて、容積の大きいアミノ酸残基を使い反応空間中のすきまをふさぐことで、銅活性中心の酸化を防ぐことができるなどの知見が得られ、次年度に計画しているcupredoxin様人工タンパク質理論設計による酸化還元電位制御およびカラーチューニングへと進めることができるため。
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Strategy for Future Research Activity |
ブルー銅蛋白質などのcupredoxin は生物中で幅広く存在し、光合成や呼吸などの生物のエネルギー変換においてはたらく電子伝達蛋白質である。その反応中心はHis、His、Cys、Metがひずんだ四面体型で銅イオンに配位したタイプ1銅活性中心をもつ。四面体構造はCu(II)イオンよりCu(I)イオンが好む配位構造であり、最配列エネルギー(reorganization energy)が小さくなるため、電子移動機能に適している。またその構造が変化することで、様々な酸化還元電位や吸光スペクトルことが知られている。 本申請では、平成25年度で得られた知見をもとに、分子動力学法、QM/MM/MD法を用いて、コイルドコイル内部のサイズ・形状・疎水性ー親水性・静電ポテンシャル・蛋白質の安定性・構造ゆらぎ(ダイナミクス)を変化させることで、cupredoxin 様銅反応中心の分子構造の歪みがどのように生じるかを基準振動モードに分解して調べる。その際、サイズに関してはCaver(http://caver.cz/)・GHECOM(http://strcomp.protein.osaka-u.ac.jp/ghecom/)を、形状・静電ポテンシャルに関してはeFseek(http://ef-site.hgc.jp/eF-seek/top.do)を、疎水性ー親水性に関してはhydropathy parameterを用いて定量化を行う。またそれらの酸化還元電位、吸光スペクトルへの影響を明らかにすることで、cupredoxin 様銅蛋白質の蛋白質環境―反応中心の分子構造―電子構造―機能の定量的な関係の理解を目指す。
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Research Products
(20 results)