2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ接合での熱電変換と局所加熱、熱散逸の第一原理シミュレーション
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Design through Computics: Complex Correlation and Non-equilibrium Dynamics |
Project/Area Number |
25104724
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 恒夫 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (30345095)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 計算物理 / 理論化学 |
Research Abstract |
本研究では、高予測性だけでなく、第一原理計算データからの理論解析にも着目し、ナノ接合系の電気、熱伝導計算方法理論開発を推進した。また、理論・計算手法開発と同じウェートで、応用計算も積極的に行っており、新規な熱電材料やその特性を計算から発見した。 分子-電極接合系では、分子のintrinsicな物性と、分子-電極相互作用の2つが競合的に伝導物性を決定する。我々は分子を1つのアンカーポイントで電極と接合するのではなく、多脚アンカー構造をもつ分子を利用し、複数の分子―電極接合点を形成して、伝導度と力学的安定性を同時に向上させるという提案を行った。伝導性軌道計算から、伝導性軌道数は加算的に増加するが、量子干渉効果により各伝導性軌道の電極-分子間電子的結合強度も増加するため、非加算的伝導度増加が起こることを定量的に示した。 熱電物性のシミュレーションについては、有機金属錯体分子ワイヤーでの長距離コヒーレントトンネル伝導特性に着目し、ピリジン系炭素骨格をもつRu二核錯体 (Ru-complex)を用いた分子ワイヤーのZT計算を行うことで、有機金属錯体熱電材料の可能性を探索した。Ru-complexをユニットとして積層(ワイヤー化)させると、通常のトンネル系よりも大きなゼーベック係数が得られることが示された。このゼーベック係数増加は軌道干渉効果の一つとも考えられるが、従来分子接合系で提唱されていた、Fano resonanceによるセーベック係数巨大化と異なり、化学修飾が不要でかつ、構造変化等に対して量子性がロバストであるといった利点をもつ。さらにゼーベック係数の温度依存性を調べると、温度によって符号が変化することが示された。これは、新規な熱電物性として、今後実験計測による「再発見」が待たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあるとおり、熱電変換指数ZTの定量見積もりに必要な、熱起電力計算方法に加え、2次元電極接合にも適用可能な、第一原理非平衡グリーン関数によるフォノン伝導計算方法を確立し、実装することができた。 また、単なる手法、プログラム開発だけでなく、精密計測との共同研究で現実的なナノ分子接合系の伝導物性や、有機熱電材料探索に計算シミュレーションを適用し、一定の成果を納めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、局所加熱、熱散逸や熱電物性の計算シミュレーション理論と方法を、非平衡伝導理論に基づいて深化させていく。とくに、フォノン-フォノン散乱効果や、イオンマイグレーションといった、より複雑な熱流計算、電子-イオン相互作用過程についても理論研究を進めていく。
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