2013 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学計算に基づく分子活性化の活性種および反応機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
25105707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
森 聖治 茨城大学, 理学部, 教授 (50332549)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子活性化 / 量子化学計算 / 反応機構 / 反応活性種 / 金属触媒 |
Research Abstract |
本年度では、高精度量子化学計算を用いて、次の課題を行った。 (1)Ni触媒によるフェニルボロン酸エステルと2-メトキシナフタレンのクロスカップリング反応、(2)Rh触媒によるC-CN結合の切断を伴うニトリルのボリル化反応、(3)アレンオキシド合成酵素(AOS)によるリノレイン酸過酸化物(HPOT)の異性化反応機構の解明 (1)については、Ni触媒によるメトキシナフタレンのC-O結合の酸化的付加を経由した反応経路を検討し、CsFの役割についても見たが、加速効果がおきなかった。フェニルボロン酸エステルのC-B結合の酸化的付加について引き続き検討する予定である。(2)については、反応は、B-BのRh化学種の酸化的付加で開始し、ボリルロジウム(I)種を形成したあと、イミノアシル中間体を経由する機構が優位であることを示した。さらに、塩基として反応を促進するDABCOの効果については、DABCOの窒素がボリルロジウムのホウ素に配位し、ボリルロジウム種の生成まではエネルギーが1.5-4.6 kcal/mol程度低下することがわかった。この論文は現在印刷中である。関連する研究として、C-CN結合開裂過程を含むPd触媒によるノルボルナジエンのシアノエステル化において、exo選択性が、Pdの基質への配位に由来するということを、理論計算により見出した。(3)の反応については、QM/MM法により検討し、最後のアレンオキシドの生成に伴うプロトン共役電子移動が、水によっては加速されないという結果を得た。さらに、(1)-(3)以外でも、我々は、ホスフィン、アミノ基を持つ2座配位子を用いた白金触媒によるアルキニルシランの選択的C-Si結合開裂のメカニズムの検討についても報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(1)については、まだ研究の終了までに検討の余地があるが、課題(2)については、Bull. Chem. Soc. Jpn誌に論文掲載が認められ、さらに、BCSJ賞の内定をいただいたほどの研究成果であった。さらに、類似のPdやPt触媒による結合開裂を含む反応機構に関する論文掲載も認められた。(3)については、現在論文投稿中である。以上、本研究を総合するとおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Ni触媒によるフェニルボロン酸エステルと2-メトキシナフタレンのクロスカップリング反応について、反応機構の解明には困難を伴うため、追加実験も行うことが決まっている。今後の研究については、Niと基質との相互作用、CsFの役割及び反応活性種が重要である。メトキシナフタレンのC-O結合への酸化的付加が最初に起きる過程はほぼ検討が終了している。一方、フェニルボロン酸のC-B結合への酸化的付加が最初に起きる過程も否定できないので、それを検討する。
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