2013 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属と硫黄がともに関わる結合活性化反応と分子変換
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
25105725
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大木 靖弘 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324394)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ルテニウム / 硫黄 / ヘテロリシス / ヒドロシラン / ヒドロボラン |
Research Abstract |
かさ高いチオラートをテザー型に配位させ、外部基質と反応し易いようRu-S部位を配置するとともに硫黄原子が金属を架橋することを抑制した、配位不飽和なカチオン性ルテニウム錯体のRu-S結合部位を新しい反応場と捉え、特に硫黄の特徴に注目した結合活性化反応の開発と、触媒反応への応用を検討した。 (1) Ru-S部位によるSi-H結合のヘテロリシス:中間体となるH-Ru-S-SiR3錯体の構造解析 Ru-S部位でH-Si結合のヘテロリシスを起こすと、Ru-H/S-Si結合を持つ錯体が生成し、S-Si部位のシリル基がシリルカチオン等価体として働くと考え、反応開発してきた。これまでRu-H/S-Si錯体の単離には至っていなかったが、過剰量の三級ヒドロシラン類をルテニウム錯体に加えて結晶化を検討し、二種類のRu-H/S-Si錯体の構造解析に成功した。S-Si結合長は2.2446(11)-2.246(3) Aであり、これまでに報告されているS-Si結合長(2.064-2.288 A)の中でも長い部類にあたる。 (2) B-H結合のヘテロリシスとN-メチルインドールの3-位選択的脱水素ボリル化 P(C6H4-4-F)3を持つカチオン性ルテニウム錯体(1 mol%)を触媒とする、N-メチルインドールの脱水素ボリル化反応を検討し、80°Cで3-位選択的なボリル化が進行することを見いだした。この反応では、H-B結合のヘテロリシスにより生成するRu-H/S-B錯体のボリル基を求電子剤(ボリルカチオン等価体)として、インドールの3-位が選択的に置換されたと考えられる。 本研究で見いだした、シリルカチオン等価体やボリルカチオン等価体の発生は、従来用いられてきたM-N, M-O反応場では不可能な反応であり、反応場としてのM-S部位の特徴を表す良い例と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒドロボラン類のH-B結合のヘテロリシスを触媒的に利用する新しい反応を開発し、金属-硫黄結合部位の反応場としての特徴を示すことに成功した。本研究で明らかにした反応原理は、シリルカチオンやボリルカチオンを新しい求電子剤として位置づける反応の開発に寄与するだけでなく、金属-へテロ原子結合部位が反応場として従来より広い概念で利用可能であることを示す、重要な知見と位置づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
金属-硫黄結合部位によるH-E (E = H, Si, B)結合のヘテロリシスを利用した反応開発を引き続き検討し、適用範囲の拡大を目指す。また、反応場としての金属-へテロ原子結合を金属-硫黄結合に留めず、金属-リン結合部位にも拡張して、新しい反応場の開拓を目指す。
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Research Products
(13 results)