2013 Fiscal Year Annual Research Report
パラジウム触媒による選択的C(sp3)-H活性化とC-C結合形成反応の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
25105727
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
塚野 千尋 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70524255)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 合成化学 / C-H官能基化 / パラジウム触媒 / 有機化学 / 複素環 |
Research Abstract |
遷移金属を用いた炭素-水素結合官能基化(以下C-H官能基化)は合成を簡便にする手法であり、現在、直截的なC(sp3)-H活性化を経由したC-C結合形成反応に注目が集まっている。我々はパラジウム触媒によるベンジル位メチル基C(sp3)-H活性化を鍵としてインドール関連化合物の合成に成功してきた。この知見を活かして、本年度、我々はパラジウム触媒によるC(sp3)-H活性化を経由した多環ヘテロ環合成を展開し、(i)簡便かつ一般性の高いインドロキナゾリノン骨格構築と(ii) pyrrophenanthridineアルカロイドの全合成を達成した。 (i) C(sp3)-H官能基化を利用したインドロキナゾリノン合成 インドロキナゾリノン骨格は天然物や医薬品に見られる含窒素複素環骨格であり、抗炎症作用等様々な薬理活性を示すことが知られている。これら化合物の合成法は限られており、その一般的な合成法の開発は重要な課題である。今回、クロロキナゾリノンを基質に用いて分子内環化の条件(Pd触媒,リガンド、塩基)を最適化し、基質適用範囲を明らかにした。また、本反応を発展させ、環化反応後さらに酸素雰囲気下で処理することでクロロキナゾリノンからワンポットでインドロキナゾリンジオンを合成することにも成功している。 (ii) C-H官能基化を利用したpyrrophenanthridineアルカロイドの全合成 Assoanine はヒガンバナ科の植物より単離構造決定された四環性アルカロイドである。我々は、本化合物及び類縁体anhydrolycorine, pratosine, hippadineの全合成をC(sp2)-H活性化を経由したカテラニ反応とC(sp3)-H官能基化を用いたオキシインドール形成反応を鍵反応として達成した。確立した合成経路は、全ての炭素―炭素結合をC-H官能基化で形成し、保護基を用いないため、短工程となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はパラジウム触媒による選択的C(sp3)-H官能基化を検討して新規触媒反応を開発することである。現在までに、ベンジル位メチル基のC-H官能基化はほぼ制御可能とし、全合成へ応用することに成功している。また、インドロキナゾリノン合成法の開発を通して、シクロプロピル基メチン部のC-H官能基化についてさらなる知見を得た。カルバモイルパラジウム錯体やイミノパラジウム錯体を近傍のメチル基C(sp3)-H結合に接近させるためには、リガンドによる制御以外に芳香環上に立体障害を持たせることや、縮環によりその化合物の配座を制御することが重要であった。また、添加物のヒドロキシピバルアミドはC(sp2)-H官能基化には効果がなく、C(sp3)-H官能基化に特に有効であることも明らかにした。一方、メチレン部のC-H官能基化は現在検討中であり、シクロプロピル基メチレンでのC(sp3)-H活性化が起きる基質を一つ見いだしている。以上、まとめるとメチル基およびメチン部のC-H官能基化は達成している。メチレン部での反応は現在開発途上にある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、パラジウム触媒によるメチレン、メチン部の選択的C(sp3)-H活性化を検討して新規触媒反応を開発することを目的とした。分子間および分子内で選択的なC(sp3)-H活性化と続くC-C結合形成を実現すれば、不斉反応や四級炭素の構築も可能となる。 分子間反応については、カテラニらの報告、すなわち、パラジウム触媒存在下でのヨウ化アリールの酸化的付加と続くノルボルネンへの挿入、分子内C(sp2)-H官能基、生じたパラジウム中間体へのさらなる酸化的付加、還元的脱離、beta炭素脱離、Heck反応を経由した連続反応を参考にする。我々は、予備的知見としてパラジウム触媒による分子内C(sp2)-H官能基化を経由してベンゾシクロブテンが生じることを見いだしている。これら反応で生成物を与える中間体は、カテラニらの反応のパラジウム中間体と類似性がある。本中間体をヨウ化アルキルとalpha, beta-不飽和エステルとで処理すれば、パラジウムへの更なる酸化的付加、続く還元的脱離とHeck反応が進行すると期待される。本反応はこれまで分子内反応に限られていた我々の反応を分子間反応へと発展させるものである。 また、ベンジル位メチル基およびシクロプロパンのメチン部C(sp3)-H官能基化を利用した反応を開発している。加えて、適切な基質を設計すれば、メチレンC(sp3)-H官能基化が中程度の収率ながら進行するという予備的知見を得ている。これら反応での知見をもとに、適切なリガンドの選択と基質の設計により、酸化的付加して生じたパラジウム(II)種とメチレンC(sp3)-Hを接近させ、メチレンC(sp3)-H官能基化を実現する。本年度も昨年度に引き続き配座の自由度を下げた基質を取り上げて、位置選択的C(sp3)-H官能基化を検討し、不斉反応への展開を目指す。
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Research Products
(11 results)