2013 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素の置換効果に基づくsp3炭素ー水素結合の触媒的高効率官能基化
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
25105728
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大村 智通 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378803)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 合成化学 / 結合活性化 / 有機ケイ素化合物 / 炭素-水素結合官能基化 / 遷移金属触媒 |
Research Abstract |
sp3炭素-水素結合の触媒的官能基化における新概念創出を目的として、ケイ素および他の元素の置換効果に基づくsp3炭素-水素結合の触媒的高効率変換手法の開発に取り組んでいる。平成25年度は、交付申請書研究実施計画に記載した「研究項目1. 有機ケイ素化合物の触媒的sp3炭素-水素結合ホウ素化の開発」について、イリジウム-フェナントロリン触媒を用いメチルトリアルキルシランを中心に検討を行った。テトラメチルシランの炭素-水素結合ホウ素化は100℃で効率よく進行したのに対し、オクチルトリメチルシランやジブチルジメチルシランは反応性が低く、135℃に反応温度を上げる必要があった。ホウ素化は、アルキル基末端のメチル基に優先してより立体的に混み合ったケイ素上メチル基で進行し、ケイ素の置換による効果的な反応促進が明らかとなった。一方、ビス(トリメチルシリル)メタンのホウ素化はメチル基選択的に進行し、二つのシリル基が置換したメチレン炭素-水素結合は全く反応しなかったことから、立体的な要因がより強く反映されることも明らかとなった。ヘキサメチルジシランのホウ素化はケイ素―ケイ素結合の切断を伴うことなく進行し、ボリルメチル基を有するジシランが生成した。これらの実験結果が示す化学選択性は、炭素-水素結合の触媒的変換反応におけるケイ素の置換効果の大きさを評価するものであり、今後の反応開発に資すると考えられる。 上述の反応条件においては、ケイ素反応基質をホウ素源であるジボロンに対し過剰量(4-10当量)用いる必要があった。検討の結果、触媒量のカリウムtert-ブトキシドを共存させ反応を行うことにより、触媒効率が大幅に向上することを見出した。この高活性触媒系では、ケイ素反応基質を制限物質として用いることができ、110℃で効率よく反応が進行した。今後この添加剤の効果について精査し、さらなる触媒効率の向上を達成したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究遂行により、sp3炭素-水素結合の触媒的変換におけるケイ素の置換効果について有用な基盤的知見を得ることができた。特に、アルキルシラン中に存在する多様なsp3炭素-水素結合の相対的な反応性について明らかとし、反応の化学選択性はケイ素の置換効果と反応点近傍の立体要因に支配されることが分かった。また、イリジウム触媒の触媒効率向上を達成する塩基性添加剤について知見を得た。これらの研究成果は平成26年度の研究遂行に資するものであり、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究により得られた成果を基に、アルキルシラン類のsp3炭素-水素結合ホウ素化についてより高効率で変換を達成する触媒系の開発に取り組む。添加剤の効果について精査し、その本質について明らかとするとともに、変換を適用可能なアルキルシラン構造の拡張をはかり、一分子中の複数の炭素-水素結合を高効率でホウ素化する多重ホウ素化反応の確立をめざす。
|