2013 Fiscal Year Annual Research Report
金属酵素に学びそれを凌駕する分子活性化の新手法開拓
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
25105744
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久枝 良雄 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70150498)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ビタミンB12 / 酸化チタン / 界面錯体 / 脱ハロゲン化反応 / 官能基転位反応 / 可視光 / 超求核性 / コバルト錯体 |
Research Abstract |
金属酵素は環境適合型触媒系の1つである。本研究ではラジカル酵素であるビタミンB12の機能に着目し、新しい分子活性化法の開拓とラジカル型直截的物質変換反応を行った。 ビタミンB12は、環状テトラピロール系配位子であるコリン環の中心にコバルトイオンを有する金属錯体であり、生体内において種々の反応に関与している。また、嫌気性細菌中の脱塩素化酵素の活性中心にもビタミンB12が存在し、脱塩素化反応の触媒として働いていることが報告されている。この脱塩素化反応における触媒サイクルでは、超求核性を有するCo(I)種が基質に求核攻撃することで反応が進行する。従来 化学試薬を用いた還元や電気化学的還元が主な活性化法であったが、本研究ではクリーンなエネルギーである光を利用した還元活性化に着目した。光増感剤としては、酸化物半導体である酸化チタン(TiO2)を用いた。これまでに、TiO2とビタミンB12誘導体を組み合わせることで、紫外線照射によりTiO2からビタミンB12誘導体への電子移動によりCo(I)種が生成することに成功している。しかし、TiO2の吸収波長は紫外領域であり、太陽光や室内光などの可視光を有効利用することができない。そこで、TiO2の可視光応答化に注目した。 TiO2の可視光応答化の手法の一つとして、カテコールを表面修飾した界面錯体型の可視光応答型TiO2を用いた。ビタミンB12誘導体を組み合わせることにより可視光応答型ビタミンB12-TiO2複合触媒を創製した。具体的には、カテコールとビタミンB12誘導体をそれぞれ別々に修飾した個別修飾型触媒、カテコール基をビタミンB12誘導体の側鎖に導入しTiO2に固定化した連結型触媒を合成し、触媒活性を評価した。本触媒は可視光照射により反応が進行し、種々の脱ハロゲン化反応および官能基転位反応に利用出来ることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、天然のラジカル酵素であるビタミンB12の機能に着目し、新しい分子活性化法の開拓とラジカル型直截的物質変換反応を見出すことを目的としている。金属酵素は、高活性・高選択的であるが、構造安定性に欠けるという欠点を持ち、応用範囲が狭い。そこで、ナノ材料や光増感剤と金属錯体の組み合わせにより、天然酵素を凌駕する機能をもつ新規触媒系を構築し、革新的触媒の開発を目指している。 本年度は、酸化チタン粒子上に金属錯体(ビタミンB12誘導体)を固定化し、光照射により金属錯体を活性化し、有機ハロゲン化物との反応により有機ラジカルを発生させ(還元反応)、ラジカル種と酸素およびアルコールまたはアミン類との反応により、エステルおよびアミド類を合成する手法を見出した。また、紫外光のみならず可視光で働く触媒系を構築するため、カテコールを表面修飾した界面錯体型の可視光応答型酸化チタンの創製に成功した。これらの成果により、可視光で活性化しラジカル種を生成できる触媒系の構築に成功したので、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はスズ化合物を用いない画期的反応として、別の触媒系の開発も実施する。すなわち、高分子に光増感剤であるルテニウム錯体と触媒部位であるビタミンB12誘導体を用いたハイブリッドポリマーを創製し、この触媒を用いて可視光で活性化するラジカル有機合成反応を開発する。 また、対象とする反応として脱ハロゲン化反応や官能基転位反応以外に、トリフルオロメチル化反応にも応用する。フッ素化合物は医薬的にも材料科学的にも極めて重要であるので、直截的なトリフルオロメチル化反応が開発できれば、その意義は極めて大である。具体的には以下のように研究を進める。 B12誘導体-メチル錯体(Co-CH3)が可視光照射によってCo-C結合のラジカル開裂を生じ、そのCH3ラジカルを有機合成反応へ応用することが可能である。そこで、B12誘導体-トリフルオロメチル錯体(Co-CF3)を用い、可視光照射によりCF3ラジカルを発生させ、それを有機合成に適用する。まずはB12誘導体-トリフルオロメチル錯体(Co-CF3)の合成・単離を行う。続いて可視光照射によるCo-C結合のラジカル開裂を誘起し、CF3ラジカルを発生する系を構築する。その際、ESRスペクトル法を用いてラジカル発生の確認と安定性評価を行う。CF3ラジカルの発生法を確立後、CF3ラジカルのオレフィンへの付加反応を検討する。次に、CF3ラジカルの高い反応性を利用して、チオフェンやピロールなどの芳香環への直接CF3化、ベンゼンやトルエンやヘテロ元素を含む不活性芳香環への直接CF3化、ウラシルやイブプロフェンなどの生理活性物質の直接CF3化反応を検討し、本系の有用性を探る。
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Research Products
(16 results)