2013 Fiscal Year Annual Research Report
離散凸解析に基づく劣モジュラ最適化問題の計算限界の解明
Publicly Offered Research
Project Area | A multifaceted approach toward understanding the limitations of computation |
Project/Area Number |
25106503
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塩浦 昭義 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (10296882)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 劣モジュラ関数 / 離散凸解析 / 組合せ最適化 / アルゴリズム / 離散凸関数 |
Research Abstract |
本研究では,劣モジュラ関数を様々な制約条件の下で最小化または最大化するという離散最適化問題を扱う.本研究の目的は,劣モジュラ最適化問題を離散凸解析の視点から調査することにより,劣モジュラ最適化問題の計算限界を明らかにすることである. 本年度は劣モジュラ最適化のアルゴリズムと計算複雑度に関する過去の研究結果を再調査すると共に,劣モジュラ最適化問題の構造の解析に取り組んだ.とくに,L凸関数と呼ばれる,整数格子点上の劣モジュラ関数の部分クラスに対して,その制約なし最小化問題について検討を行う.この問題は多項式時間で解けることがわかっているが,本研究ではまず,アルゴリズムの反復回数のより詳細な解析を行った.その結果,既存の貪欲アルゴリズムが反復回数の観点から最適なアルゴリズムであることを証明できた.この性質は,画像処理や組合せオークションと言った,L凸関数最小化の重要な応用において非常に有用なものである. また,貪欲アルゴリズムの各反復においては,ある種の劣モジュラ集合関数の最小化が必要である.通常,この問題を解くときには集合関数の関数値が事前にわかっているという前提があるが,組合せオークションに適用する場合には,関数値はわからず,別の情報を用いて最小化する必要がある.本研究では,このような状況においても,劣モジュラ集合関数の最小化が効率的に解けることを示した. また,研究の遂行のために,イギリスおよび香港で開催された国際会議や国内の学会・ワークショップ等に参加し,関連分野での最新の研究成果を調査すると共に,他の研究者との情報交換を行い,劣モジュラ関数に関する新たな知見を得ることができた.得られた情報については,来年度の研究に活用する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の目標は,劣モジュラ最適化のアルゴリズムと計算複雑度に関する過去の研究結果を再調査すると共に,劣モジュラ最適化問題の構造の解析に取り組むことであった.とくに,制約なし最小化問題に重点を置いて研究を進める予定であった. 本年度の研究内容であるが,劣モジュラ最適化のアルゴリズムと計算複雑度に関する過去の研究結果を再調査すると共に,劣モジュラ最適化問題の構造の解析に取り組んだ.とくに,L凸関数と呼ばれる,整数格子点上の劣モジュラ関数の部分クラスに対して,その制約なし最小化問題について検討を行う.この問題は多項式時間で解けることがわかっているが,本研究ではまず,アルゴリズムの反復回数のより詳細な解析を行った.その結果,既存の貪欲アルゴリズムが反復回数の観点から最適なアルゴリズムであることを証明できた.この性質は,画像処理や組合せオークションと言った,L凸関数最小化の重要な応用において非常に有用なものである. また,貪欲アルゴリズムの各反復においては,ある種の劣モジュラ集合関数の最小化が必要である.通常,この問題を解くときには集合関数の関数値が事前にわかっているという前提があるが,組合せオークションに適用する場合には,関数値はわからず,別の情報を用いて最小化する必要がある.本研究では,このような状況においても,劣モジュラ集合関数の最小化が効率的に解けることを示した. 以上のことから,本研究は順調に進展しているといえるだろう.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,前年度の研究成果を踏まえて,様々な制約に関する劣モジュラ最適化問題のアルゴリズムを開発し,計算上界の観点から劣モジュラ最適化問題の計算限界を明らかにする. まず,劣モジュラ最小化および最大化問題に関して,多項式時間厳密解法が存在する制約のクラス,および定数近似解法が存在する制約のクラスを明らかにする.その際には各種制約つきの問題に対して厳密解法または近似解法を示す必要があるが,問題の離散構造に関する研究成果を踏まえて,類似する問題に対する解法が拡張可能であるかどうか検討すると共に,新たなアルゴリズム技法・最適化手法を適用した解法の開発を試みる. さらに,特殊な劣モジュラ関数のクラスに対して,計算複雑度の観点からより良いアルゴリズムの構築が可能かどうか検討する.たとえば,応募者がこれまで研究に携わってきたM凹関数はその典型例であるが,このような良い性質をもつ劣モジュラ関数のクラスを明らかにする. また,劣モジュラ最適化問題に対する既存のアルゴリズムの多くは非常に複雑で時間計算量が大きいが,新たなアプローチによるより単純なアルゴリズムの構築を試みる.とくに制約なし劣モジュラ最小化問題は多項式時間で解けるものの,その複雑さから非専門家には理解が非常に困難で有り,また実用的ではないので,これまでの幾何的なアプローチとは異なる手法(例えば組合せ的な手法)の開発を行う. 本研究課題で得られた研究成果については,国内外の学会等で発表を行い,関連分野の研究者からの評価を仰ぐ.
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