2013 Fiscal Year Annual Research Report
ローカルスケールの大気海洋相互作用が海洋生態系に及ぼす影響の評価
Publicly Offered Research
Project Area | Multi-scale air-sea interaction under the East-Asian monsoon: A "hot spot" in the climate system |
Project/Area Number |
25106707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
吉江 直樹 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (50374640)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生態系モデル / 物質循環 / 縁辺海 / 沿岸域 / 大気海洋相互作用 / 東シナ海 / フロント渦 |
Research Abstract |
本研究は、海洋生態系・物質循環モデルを現場観測による生物地球化学的データにより補いながら、中緯度の縁辺海・沿岸域における生態系・物質循環を現実に近い形で再現することをめざす。そして、ローカルスケールの物理環境変化が海洋生態系・物質循環に及ぼす影響の実態を把握すると共に、支配的な物理・生物地球化学的過程を明らかにすることを目的とする。 今年度は、主に、代表的な中緯度の縁辺海である東シナ海黒潮域において、現場集中観測により捉えた海洋低次生態系の劇的な変化について詳細な解析を行った。東シナ海黒潮域は、一般的には貧栄養で小型ラン藻が優占し生産性の低い海域であり、富栄養で大型ケイ藻が優占する生産性の高い海域に比べて魚類の仔稚魚にとっては餌が少なく産卵場としては適していない。しかしながら、実際には、この海域は我が国の重要な水産資源であるサバやアジの主要な産卵場となっており、それらを下支えするメカニズムについては未解明な部分が多い。本研究の現場集中観測により、黒潮流軸付近の亜表層に発生したフロント渦の通過に伴い栄養塩を多く含む黒潮中層水が有光層下部まで湧昇し、栄養塩環境が改善されたことによって、貧栄養環境に適応した小型ラン藻主体の生態系から富栄養環境に適応した大型ケイ藻主体の生態系へと劇的な変化が生じたことが明らかとなった。このような亜表層におけるフロント渦や生態系応答は、人工衛星による海表面データから見つけることができず、現場観測により初めて明らかにすることができた。このようなローカルスケールの亜表層フロント渦が定期的に発生することにより、この海域の生産性が高められ、魚類の主要な産卵場になっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していたローカルスケールの環境変化に対する生態系応答の解析、生態系物質循環モデルの調整・応用、既報観測データの収集、それぞれほぼ計画通りに進んでいるため、順調に推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進んでいるため、研究の推進方策を大きく変更する予定はない。
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