2013 Fiscal Year Annual Research Report
多孔質ガラス導光型光化学反応器の開発研究
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical conversion of solar energy by artificial photosynthesis: a breakthrough by fusion of related fields toward realization of practical processes |
Project/Area Number |
25107514
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
宇佐美 久尚 信州大学, 繊維学部, 教授 (60242674)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光化学反応器 / 導光路 / 多孔質流路 / 量子効率 |
Research Abstract |
光化学反応を物質生産のプロセスとして利用するためには、実験室スケールから大幅に規模を拡大する必要がある。しかし、反応容器を大きくすると受光面積/体積比が低下するとともに、合成反応の濃度条件では反応器に充填した原料溶液の表面近傍で入射光が吸収または散乱され、反応器内の大半の物質には光が届かないため反応性は著しく低下する。本研究では、Pyrex ビーズを充填融着した多孔質ガラス導光型反応器を試作し、多孔質ガラス内部の導光路と間隙を利用する物質流路を完全に分離することにより、濃厚・懸濁溶液系で光化学反応をスケールアップするための具体的な解を見出した。 H25年度の成果として、直径5 mmのガラスビーズを直径3 cm長さ40 cmのガラス円筒に充填・融着させた反応器を試作し、この反応器の周囲に20 Wブラックランプ6本を配置した反応装置を試作した。この反応の受光光量を、トリスオキサラト鉄(III)酸カリウム溶液を光量計として測定したところ、毎秒約10 μmolの光子を受講していることを明らかにした。この反応器の内壁にアナターゼ型酸化チタンをコーティングして、4-クロロフェノールの光触媒分解反応をモデルとして活性を評価した。ビーズを含まない単純な円筒型反応器と比較して、ビーズ導光型反応器は約6倍に活性が向上した。 さらに、直径10μmのガラスビーズをガラス基板上に積層した膜の導光性をミクロ分光法で評価し、直径10μm のビーズを10層積層した多孔質層では概ね定量的に導光することを明らかにした。そこで、直径5 mmのガラスビーズを融着した多孔質ガラスの内部表面に直径10 μmのガラスビーズの積層層を第二階層として形成した反応器を試作した。ところが、圧力損失は見られなかったが、数百μmの主流路を大半の溶液が素通りするため、μmスケールの流路形成による活性向上効果は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度は、Pyrex ビーズを充填融着した多孔質ガラス導光型反応器の導光特性と光反応活性評価として、1)ビーズの導光特性の測定、2)多孔質ガラス反応器内部への導光特性評価、および3)多孔質ビーズ反応器の光化学反応活性の評価を計画した。項目1)の導光特性は、直径10μmと直径5 mmのガラスビーズを結着して多孔質ガラス構造を試作し、直径10μmのビーズを10層積層した多孔質層では概ね定量的に光が透過し、直径5 mmのガラスビーズでは約7連結まで光が透過することを明らかにした。項目2)は直径5 mmのガラスビーズで多孔質ガラス体を形成した反応器を試作し、反応器に入射する光量を化学光量計で測定した。ガラス多孔質体を含まない円筒型反応器と概ね等量の受光量となることを明らかにした。これらの知見は、多孔質ガラス反応器の重要な設計指針を与える。さらに、項目3)については、4-クロロフェノールの光分解反応をモデルとして、この反応器の活性を評価した。直径5 mmのガラスビーズで形成した多孔質構造を持つ反応器では、多孔質構造を持たない円筒型反応器と比較して約6倍の活性向上が見られた。以上の結果は、H25年度の研究計画を概ね網羅していることから、達成度は95%と評価している。 これらの知見から、多孔質ガラス反応器の構造最適化が望まれるが、適切な形状のガラス部品の入手が極めて困難であり、また高価なため十分な構想最適化が進んでいない。一方、反応のバリエーションを高めるため、いくつかの光触媒反応や直接励起、色素増感反応など多様な反応への適用性を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度の研究では、多孔質構造を階層化してmmとμmスケールの二種類の細孔を導入し反応器の内部表面積を高めたが、μmスケールの細孔には溶液が滞留したため、実質的な光化学反応はmmスケールの細孔内で起こり、μmスケールの多孔質構造を形成しても反応活性は向上しないことが明らかとなった。そこでH26年度の研究課題として、より均質な多孔質構造を形成し、多孔質ガラスの細孔を効果的に光化学反応に利用できる反応器を開発することを目的とする。 具体的な目標として、導光、内部表面積の増加および溶液の通過に好適なガラス多孔質体の細孔径を探索し、この観点で最適化された多孔質ガラス構造を持つ光化学反応器を試作する。多孔質ガラス反応器が受光できる総受光量を化学光量計を用いて測定し、反応器のサイズと受光量の関係を調査する。また、反応器中の溶液流れを流速を変えながら観察して不均質な流れを生じないことを確認する。 典型的な光化学反応をモデルとして、試作した光化学反応器の活性を評価する。例えば、基質を直接励起する反応のモデル系としてシクロヘキセノン類の光[2+2]反応を検討する。この反応は典型的な二分子光反応であり基質濃度に強く依存する。基質分子の励起寿命の間に別の基質に出会わなければ反応しないため、高濃度条件が好ましい。多孔質ガラス導光路を備えた本反応器では多孔質ガラスを介して反応器の中央部分まで導光可能なため、流路サイズを調節すれば反応器全体に入射光を導光することが期待できる。同様のメリットは酸化チタン光触媒系でも期待できるが、さらに酸化チタンの光散乱効果が重なるため、従来の反応器では入射光を有効に利用できない。酸化チタン光触媒を多孔質反応器の内壁に担持し、4-クロロフェノールの光分解をモデルとして反応器の活性を評価する。
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