2013 Fiscal Year Annual Research Report
水素合成触媒としての応用を視野に入れたヒドロゲナーゼの構造・技術基盤の確立
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical conversion of solar energy by artificial photosynthesis: a breakthrough by fusion of related fields toward realization of practical processes |
Project/Area Number |
25107522
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
庄村 康人 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (50423900)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水素合成酵素 / 金属タンパク質 |
Research Abstract |
ヒドロゲナーゼは,水素の分解と合成を触媒する金属タンパク質で,多くの微生物の細胞内において,水素から生育に必要なエネルギーを取り出したり,これとは逆に,余剰なエネルギー(還元当量)を水素として放出したりする役割を担っている.本研究では,まだ性質や機能がよくわかっていないエネルギー保存型[NiFe]-ヒドロゲナーゼを研究対象とし,その大量発現系の構築およびX線結晶構造解析を用いた原子レベルでの立体構造決定を目指している.同ヒドロゲナーゼの発現系構築はこれまでに成功例が知られていないが,これは,酵素学的な水素合成システムの開発のための安定した試料供給や機能改変には必須な技術である.また,同酵素の詳細な反応機構や,さまざまな要因による反応阻害機構を解明するには立体構造情報が不可欠であり,これらは,より機能的な水素合成触媒の開発において重要な役割を担う.今年度は,まず,好熱菌由来の同ヒドロゲナーゼの合成に関与するタンパク質群を大腸菌内で発現させるためのベクター構築に着手した.ヒドロゲナーゼの構造遺伝子6つと,活性部位の合成に必要なタンパク質をコードする6つの遺伝子について,大腸菌用にコドンの最適化をした合成遺伝子を調製した.これら12の遺伝子を3種類のプラスミドに分けて発現させたところ,SDS-PAGEとCBB染色によって9つのタンパク質についてはその産生を確認することができた.また,好熱菌から直接目的酵素を調製する方法の最適化およびその結晶化実験も進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発現系の構築においては,プラスミドの調製に予定より時間がかかったが,ほとんどのタンパク質の合成を目視するこができたため,当初予定していた,発現させるタンパク質の種類の最適化は不要であると考えられる.また,研究計画には入っていなかったが,宿主となる大腸菌の内在性ヒドロゲナーゼ欠損体の調製も完了した. X線結晶構造解析においては,当該年度の秋ごろに,タンパク質調製用の大型嫌気グローブボックスが所属研究室に導入され,そのセットアップが順調に進み,酸素に弱いタンパク質を効率よく調製するための系を確立した.結晶はいまだX線回折実験には大きさが不十分な微結晶しか得られておらず,再現性もよくない.
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Strategy for Future Research Activity |
まだ発現を確認できていない遺伝子が3つあるが,活性をもつヒドロゲナーゼを発現させるための培養条件の検討を始める.これと並行して,発現ベクターのさらなる最適化をすすめる.これまでは好熱菌由来のヒドロゲナーゼを大腸菌で発現させる系の開発をめざしてきたが,今年度は大腸菌内在性のヒドロゲナーゼの大量発現系の構築にも着手する.これは当初の研究計画にはなかったが,大腸菌由来の酵素の方がより結晶化に適している可能性も考えられる.好熱菌から酵素を単離・調製する方法の最適化は,予定通り進める.現状では精製の工程が多いためか結晶化の前に試料の多くが失活してしまうという傾向が見受けられるため,より迅速な試料調製の手法の開発をめざす.
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