2013 Fiscal Year Annual Research Report
動的階層構造液晶を用いた特異的金属集積による表示・薬理活性機能の創成
Publicly Offered Research
Project Area | Fusion Materials: Creative Development of Materials and Exploration of Their Function through Molecular Control |
Project/Area Number |
25107702
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
吉澤 篤 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (30322928)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 超分子化学 / 分子認識 / 液晶 / 階層構造 |
Research Abstract |
1)サイボタクチックネマチック(Ncyb)相の分子設計:Ncyb相では、配向の秩序のみが存在するとされるネマチック液晶の中にスメクチック類似の層構造を持つクラスターが存在している。最近、二軸性ネマチック相やブルー相との関連が指摘され興味を持たれているが、多くはベントコア型の液晶分子で発現し、Ncyb相の設計指針は得られていない。本研究では、2つの液晶形成基をカテコールでつないだU型分子及び末端にヒドロキシル基を持つ棒状分子を合成した。いずれの化合物も20K以上の温度幅でNcyb相を発現した。U型分子では層内の相互作用を強めることでクラスターが空間平均で存在し、水素結合分子ではミクロ相分離に由来する平行配列とエントロピー項に由来する反平行配列の競合がクラスターの生成・消滅の駆動力となり、クラスターが時間平均で存在していると考えている。 2)ブルー相の安定化:ブルー相発現に分子二軸性が重要であることを示し、それに基づき枝分かれを持つ棒状ネマチック液晶がブルー相安定化に有効であることを見つけた。 3)液晶性化合物による抗腫瘍効果:一級アルコールを持つ安息香酸エステル誘導体を合成し、固形がんである非小細胞肺がん細胞株A549の増殖抑制に及ぼす効果と自己集合能との相関を調べた。この化合物のIC50は4.7マイクロMであり、活性発現濃度では粒径が130~170nm程度の球状を形成していた。上記化合物の薬理活性発現に関与する分子間相互作用を検討する目的で、種々の二量体を合成し、A549細胞増殖に及ぼす影響を調べた。得られた結果から、既存のドラッグデリバリーシステムとは異なり、カプセル化を伴わずに、薬剤自身が集合して膜を透過し、その後、細胞内で活性を発現する機構を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)サイボタクチックネマチック相の分子設計指針を得た(J. Mater. Chem. C, DOI:10.1039/C4TC00001C)。 2)ブルー相の分子設計を示し、最近の研究動向をまとめた(RSC Advances, 2013, 3, 25475)。 3)低分子液晶が肺がんなどの固形がんに有効であることを示した。既存のドラッグデリバリーシステムとは異なり、カプセル化を伴わずに、薬剤自身が集合して膜を透過し、その後、細胞内で活性を発現する機構を提案した(J. Mater. Chem. B, 2014, 2, 1335)。
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Strategy for Future Research Activity |
ブルー相の機能設計:光学的等方相であるブルー相は次世代液晶ディスプレイとして期待されているが、表示材料開発には発現温度幅の拡大と駆動電圧の低下が必須である。H25年度に引き続き高分子による温度幅拡大を検討するとともに微粒子添加による駆動電圧低下を試みる。 アキラル分子からなるキラルな液晶相の構築:H25年度の予備的成果として、アキラルなフレキシブル三量体液晶の二成分等モル混合系においてらせん秩序形成を観察した。偏光子(P)と検光子(A)を直交させたクロスニコル下では暗視野であるが、クロスニコルからずらすと明暗のドメインが観測され、ずらす向きを逆にすると明暗が反転した。これは各ドメインが旋光性を持ち、そのねじれの向きが逆であることを示している。この現象は既存のメカニズムでは説明できない。H26年度は構造ー物性相関を調べることで、この液晶相の温度範囲等の物性制御方法を明らかにするとともに、液晶相におけるキラリティー発現の新しい方法論を提案する。また、この液晶相がナノ粒子を含有する新しい構造複合体構築のためのテンプレートとなることを期待して、領域内で共同研究に取り組む。 液晶の医薬への展開:液晶分子によって形成される球状の集合体に金属を含有させることで生体内における特異的金属集積が可能になるとの仮説のもとに、金属融合液晶材料によるMRI造影剤の可能性を探る。
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