2013 Fiscal Year Annual Research Report
無機ナノシートを用いた光機能性無機―有機融合液晶の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Fusion Materials: Creative Development of Materials and Exploration of Their Function through Molecular Control |
Project/Area Number |
25107728
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
中戸 晃之 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10237315)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 無機ナノシート / コロイド液晶 / 相分離 / 半導体光触媒 / リオトロピック液晶 / セルロース |
Research Abstract |
本研究の目的は、無機のニオブ酸ナノシート液晶と有機の液晶や機能分子とを組み合わせた新規な融合マテリアルを構築し、光合成モデル機能(電子移動、エネルギー捕集)を発現させることである。平成25年度は、ナノシート液晶の構造構築を、ナノシート液晶のマクロ組織化と、無機および有機ロッド粒子液晶との複合化の2通りの観点から検討した。 ニオブ酸ナノシート液晶のマクロ組織化では、ナノシートの外場配向と液晶のドメイン成長制御とを組み合わせ、成長させた液晶ドメイン(タクトイド)を2次構造単位とするマクロ組織構造を形成させることができた。十分にタクトイドが成長した液晶に電場と重力を互いに垂直に印加することで、ナノシートが一方向に配列し、かつmmレベルの周期構造をもつ組織体を構築した。これにより、厚さ1 nm、幅2 μmのナノシートを階層的に組み上げることで、ミクロ~マクロのすべての段階で制御された構造を構築する手法を確立した。さらに、この組織体を用いて色素の光触媒分解を行わせたときに、光触媒であるニオブ酸ナノシートの配列に由来する反応性の変化が観察された。 ナノシート液晶と他の液晶との融合では、無機の板状および棒状粒子、および有機棒状粒子と複合化させた多成分系コロイド液晶を組織化した。多成分系コロイド液晶は、同種粒子間と異種粒子間との相互作用の違いによって相分離構造を形成する。本研究では、チタン酸ナノシートと粘土ナノシートとを組み合わせたシート─シート系、ニオブ酸ナノシートとセルロースのナノロッドとを組み合わせたシート─ロッド系を調べた。いずれの系でも、粒子の相分離を確認し、異なる複数種の液晶相を含む多相共存を観察して、液晶形成の相図を確立した。このような多相共存を実験的に確認した例はほとんどないため、新規なコロイド液晶系を創出できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、無機と有機の2種類のコロイドメソゲンを融合させた新たな液晶の創出を主なターゲットとし、これに無機コロイドメソゲンの組織化や有機分子を組み合わせて光機能の発現をめざしている。しかし、有機メソゲンとの融合については、セルロースロッドとの融合にようやく成功した段階で、系の全容を明らかにできていない。ただし、このステップは当初から認識していた難所であり、これを実現するためにいくつかの物質系を試して成功した系を発展させる計画であった。これまでの試行の中で成功したのはナノシートーセルロース系のみであるが、現に成功系が得られていることから、致命的な遅れとまでは考えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討は、ナノシートーセルロース系を中心に行う。相挙動が明らかになっていない組成領域の検討を進め、相図を確立させる。また、高解像顕微鏡や小角散乱測定によって液晶相の構造を決定する。光機能性の検討としては、系への電子受容性有機分子の添加による半導体ナノシートから電子受容体への光誘起電子移動、増感色素分子の添加による色素から半導体ナノシートへの光誘起エネルギー移動(増感)を調べる。これらの光化学挙動は、半導体ナノシートと有機分子の相対配置や系内の粒子や分子の相互拡散の影響を大きく受けるはずである。この作業仮説を念頭に、液晶の特性と光機能の関連を追求し、ナノシート液晶を用いることによる光機能発現の特徴を明らかにする。
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