2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロプラズマ・液体界面を有する微細気泡輸送によるバイオ・メディカル機能創発
Publicly Offered Research
Project Area | Plasma medical innovation |
Project/Area Number |
25108504
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
山西 陽子 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (50384029)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 液中プラズマ / ラジカル輸送 / 3次元加工 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
研究テーマ「マイクロプラズマ・液体界面を有する微細気泡輸送によるバイオ・メディカル機能創発」において,大気圧液相中で気泡という形でプラズマエネルギー体を分散輸送し,加工精度を制御する手法により悪性細胞の殺菌・死滅や3次元加工を実現させることを目標に研究を遂行している.初年度はマイクロチップ内にプラズマ界面を安定生成させ,それを分散輸送することを目標として研究を進めた.これまで2次元マイクロチップ内において液中分散プラズマ気泡の生成を行ってきたが,実際に内視鏡等に組み込む等の実用化面を考慮しプローブタイプの3次元流路と電極配置を設計・製作し液中プラズマ気泡の分散輸送を達成するに至った.電極配置においては当初の研究実施計画にあったスパイラル電極から多重円環状電極に設計を最適化し,複数のグラウンド電極を配置することによってより遠くに液中プラズマ状態気泡を輸送することに成功した.具体的にはグラウンド電極を多極にすることで,単一グラウンド電極の時に比べ,多極電極では約145%の距離の延長が見られた.またファイバー型分光光度計を用いた計測において気泡内のOHラジカルの存在を確認することができた.またプローブ外部から磁場を与えることによって,気泡内発光の収縮と発光強度とOHラジカル強度の向上も確認し,プラズマエネルギーの分散輸送と同時に密度の濃いラジカルの遠方輸送についての基盤技術を構築した.また上記技術と同時並行に研究開発を行っているより小型なプローブにおける電界誘起気泡による遺伝子導入技術については,アフリカツメカエルへのm-RNA導入に成功し,高精度かつ低侵襲なインジェクション技術を構築中である.今後上記2つの技術を融合し,幅広い難切削物質や生体資料への新しい3次元加工技術・ラジカル輸送技術を構築していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究は,当初の研究実施計画に沿って概ね順調に進展している.初年度はマイクロチップ内にプラズマ界面を安定生成させ,それを分散輸送することを目標として研究を進めた.従来の2次元マイクロチップから,より実用化フェーズに近づけるための3次元プローブ型液中プラズマ気泡発生装置を設計開発した.当初はスパイラル電極による,より遠方プラズマ気泡輸送を目標としたが,基礎実験の結果多極円環状電極配置でより遠方にプラズマ状態の気泡を発生することを実現させた.従来数百μm程度しか2次元流路内で輸送できなかったプラズマ発光は,多極円環状電極配置を行うことにより数mm~数cmオーダの輸送距離を実現することができた.プラズマ発光がより遠方に輸送できたことは,つまりその後に発生するラジカルにおいても遠方に液中を輸送することが可能になったということである.反応面積の大きい気泡という形で,反応活性種を遠方輸送することに成功し,かつ大気圧液相中で気泡という形でプラズマエネルギー体を分散輸送することによって,本研究の目標である悪性細胞の殺菌・死滅や3次元加工を実現させることを目標に研究を順調に遂行している.また電界誘起気泡メスにおいても上記の3次元プローブ形状を有し,より小型なモデルとして電界で発生した気泡の気液界面に試薬や遺伝子等を付着させて加工と同時に遺伝子導入を行う研究も平行で順調に進んでいる.この小型モデルの出力を上げるとラジカル内包気泡を発生させる可能性が高いため,今後の研究に大いに役立つメカニズムとしての展開を予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は多極円環状電極配置や外部磁場印加により3次元プローブを用いてより遠方にプラズマ状態の気泡を輸送することに成功した.平成26年は具体的な細胞や生体資料や何切削物等へ気泡を照射することで,3次元加工性能を評価する実用化へのフェーズへ移ることとする.3次元多極円環状電極プローブと電界誘起気泡発生用小型プローブの技術を融合し,プラズマとキャビテーションの技術が一体化する技術を構築するものとする.これまで加工が困難とされてきたカーボンファイバー等の剛性の高いものから,液中下の柔軟な生体組織への低侵襲・高精度加工など大きなダイナミックレンジの加工性能を有する新しいタイプの加工装置の実現を目指す.高精度照射エネルギー制御を行うために,気泡のサイズや気液界面の進行スピードや気液界面の厚さ等を制御することを目指し,加工対象物に適合した照射量を評価できるようにする.プラズマ・ラジカルの生体組織への照射量は,ある一定量以内であれば,活性化を促進し,それ以上の量になると死滅へ誘導されることが多い.その境界の照射量を気泡形状のエネルギー体として存在できるこのデバイスを用いて加工対象ごとに定めることにより,高精度なプラズマ医療発展へと繋がる技術となる.本研究の今後の推進の主軸として照射ラジカル制御量の高精度制御が可能な新しい3次元加工プラットフォームの作成を行うことにある.このことより大気圧液相中で気泡という形でプラズマエネルギー体を分散輸送し,加工精度を制御する手法により悪性細胞の殺菌・死滅や遺伝子導入や3次元加工を実現させる.
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