2013 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ照射に対する細胞応答の分子機構 -安全なプラズマ医療を目指した学術基盤-
Publicly Offered Research
Project Area | Plasma medical innovation |
Project/Area Number |
25108511
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
足立 哲夫 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40137063)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プラズマ医療 / 活性酸素 / ストレス / シグナル伝達 / アポトーシス |
Research Abstract |
近年、プラズマ照射の医療への応用が急速に進み、有為な効果が示されているものの、その効果を証明するメカニズムについては未解明な部分が多い。プラズマ照射法としては細胞培養系に直接プラズマ照射する方法(直接法)と、別にプラズマ照射した培地を細胞に負荷する間接法があるが、より安全性が高く適応が広いと考えられる間接法を用いて、がん細胞に対するアポトーシス誘導を検証するとともに、そのメカニズムについて詳細に検討し以下の結果を得た。 1.プラズマを照射したDMEM培地(PAM)には照射時間依存的に培地内に過酸化水素が蓄積し、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞A549細胞に対する生存率低下活性が増大した。その活性はcatalaseにより抑制された。 2.PAMまたは過酸化水素添加培地にてA549細胞を処理した場合、細胞内にて活性酸素種(ROS)産生を確認した。PAMによるA549細胞生存率低下にkinase系のシグナルは関与しないことが確認された。 3.PAM処理にてミトコンドリア膜電位の低下(JC-1染色)とそれに引き続く細胞内Ca濃度の上昇が確認された。また、ミトコンドリアに存在するアポトーシス抑制因子Bcl2の発現低下も確認された。一方、caspase-3の活性化やcaspase阻害剤の影響が認められなかった。PAM処理による細胞膜傷害(Annexin V染色)も確認された。 以上の結果より、PAMによるA549細胞傷害は、caspase非依存性アポトーシスに依ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラズマ照射によるがん細胞のアポトーシス誘導に関しては、がん細胞培養系にプラズマを直接照射する直接法より、プラズマ照射培地(PAM)を細胞に負荷する間接法の方が、医療への応用を考えた場合、より安全で汎用性が高く、生理活性物質として供給できるというメリットがある。そこで、PAMのがん細胞傷害作用について検討した結果、アポトーシスが種々の検出系にて確認された。また、その誘導メカニズムについても詳細に明らかにすることができ、本項目については当初計画以上に進展した。 一方、弱いプラズマ照射条件にて調製したPAMによるストレス抵抗性付与に関する研究については、その実験に使う細胞株を選択し、プラズマ照射条件、細胞傷害や抵抗性の評価法を確定しなければならないが、本年度実施したA549細胞に対するPAM負荷の影響を検討するための条件設定の中である程度の情報は得ることができたので、それをもとに実験系を構築する。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞A549細胞にプラズマ照射培地(PAM)を負荷した場合の細胞死についてアポトーシスの観点から検討してきた。アポトーシスについては特にミトコンドリア機能障害を伴うcaspase非依存性アポトーシスの可能性を示唆できた。次年度は、アポトーシス実行分子の一つであるpoly(ADP-ribose) polymerase(PARP)の関与とそのシグナル伝達を詳細に検討する。さらに細胞膜上のストレスセンサーといわれているtransient receptor potential(TRP)の関与を、特にPAM中の過酸化水素に対する応答の観点から検討する。 プラズマは、ラジカル、イオン、電子、中性種などの活性種を生成するが、PAM中に比較的安定に存在する活性種としては、過酸化水素や(亜)硝酸塩が報告されている。本年度の研究において過酸化水素の関与は明らかになったが、それのみではPAMの活性を説明することができず、過酸化水素から派生する因子や(亜)硝酸塩による細胞傷害性を前述の観点にて評価する。 プラズマ照射エネルギーに依存する二相性の細胞応答、特に低エネルギーのプラズマ照射にて調製したPAMの適用が細胞のストレスに対する抵抗性獲得に繋がる可能性について検討する。この分野は全く未知のため、まず実験に供する細胞について癌細胞以外に線維芽細胞や神経系細胞を用いてPAM負荷の影響を評価する。また、ストレス抵抗性獲得が認められた場合、抗酸化能の亢進などを中心にそのメカニズムを解明する。
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