2013 Fiscal Year Annual Research Report
レポーターアッセイを用いた海洋メタゲノムからの新規生合成マシナリーの探索
Publicly Offered Research
Project Area | Biosynthetic machinery: Deciphering and regulating the system for bioactive metabolite diversification |
Project/Area Number |
25108701
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 雅紀 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (30505251)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 天然物 / クオラムセンシング / メタゲノム / レポーターアッセイ |
Research Abstract |
本研究ではレポーターアッセイを用いた海洋メタゲノムからの新規生理活性物質の生合成遺伝子の取得、および異宿主発現による化合物の生産と同定を目的とした。まずはメタゲノム法の特徴である網羅性を利用し、環境中微生物が用いるクオラムセンシング物質の多様性と分布に関して検討を行った。その結果、従来グラム陰性細菌に広く分布しているクオラムセンシング物質であるアシルホモセリンラクトンの生合成遺伝子とは明らかに異なる生合成遺伝子により、非常に強い活性を示す化合物が生産されることを確認した。また、該当する遺伝子の相同遺伝子は様々な環境サンプルより取得されており、一般的に存在する可能性が考えられた。 活性クローンの培養液から活性化合物の単離を試みたところ、目的物質は非常に脂溶性の高い化合物であり、物性の面からもアシルホモセリンラクトンと異なることが示唆された。生産物質は極微量成分であったが、各種クロマトグラフィーを組み合わせて用いることで、最終的に10段階以上の精製ステップを経て単一ピークとして取得した。しかしながら、その収量は40Lから0.1mg以下と、非常に低いものであった。 高分解能質料分析の結果、本化合物の分子式はC16H11O3N3と推定した。また、そのUVスペクトルにおいて330nmまでおよぶ吸収を示したこと、さらに分子量に対して13という大きい不飽和度から判断し、高度に縮環した複素環化合物であることが考えられた。 しかしながら、収量が微量であったため、NMR等によるさらなる構造決定は困難であった。そこで、近年開発された結晶スポンジ法の利用、あるいは生合成情報からの構造推定、さらには生合成構想の発現亢進による化合物の増量などを検討したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、目的とする生理活性を有する化合物を生産する生合成遺伝子を取得し、実際に化合物の生産を行っている。また、生産物は非常に微量成分であり、その単離は困難であった。しかしながら、試行錯誤の結果、異なる分離モードのクロマトグラフィーを他段階組み合わせることで、完全に単一ピークとして活性物質を取得することに成功した。その収量は40Lから0.1mg以下と非常に少ないものであったが、原理的には単純にその原料を増やすことで、純粋な化合物を構造決定に必要な量確保できることを明らかにした。 また、その分子式を非常に高い精度で決定しており、生合成情報と合わせることで、構造を決定する上での重要な情報を得た。生合成遺伝子の機能から判断して、目的とする化合物は宿主である大腸菌に従来存在する生体分子の一部を修飾した化合物であると考えられ、分子式やUVスペクトル、さらにはクロマトグラフィーにおける物性などの情報は今後の構造決定において、有益な情報を提供するものである。 一方、生産量が少ないため、その精製も非常に難度の高いものとなっており、今後必要量を確保するにあたっても、多くの労力を必要とすることが予想される。そこで、生合成遺伝子の発現亢進や、生合成情報を基にした、前駆物質の投入など、生産量を増加させる試みも平行して行ってきたが、そちらに関しては現在まで顕著な結果は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において未知クオラムセンシング物質の生産と単離方法を開発した。また、構造情報に関しても一部を取得している。今後は目的物質の構造を確定するために、化合物の増量が必要となる。その方法として、大量培養後、既に確立している単離スキームに則り、目的物質を得るというものが考えられる。これは原理的には実現確実な方法であり、今後必ず進めていくべき課題のひとつであり、研究要員を増員して行う予定である。また、その過程において、精製条件の改善改良を進めることで、収率の増加を目指す。 一方、生合成遺伝子情報および分子式情報から、目的活性化合物の前駆物質をかなり絞り込むことが可能である。候補となる化合物を分析し、それを培養液に投入することで、生産量の増加可能性を検討する。また、生産量が低い要因のひとつとして、副産物の存在が明らかになっており、そちら代謝系路を遮断することで目的物質の増量を行うことが可能であるかも検討課題のひとつである。 また、現在解析している遺伝子に相同性を示す遺伝子は様々なメタゲノムライブラリから見出されており、広く環境中に分布していることが示唆されている。その中には、現在解析を進めている遺伝子と同じ化合物を生産し、さらに大腸菌での発現に適している遺伝子が存在する可能性がある。環境中での普遍性とより物質生産に適した遺伝子を取得するためにも、様々なメタゲノム由来の相同遺伝子についても合わせて見当を行う。
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