2013 Fiscal Year Annual Research Report
新奇アーキア酵素を活用した非天然イソプレノイドの生合成マシナリー
Publicly Offered Research
Project Area | Biosynthetic machinery: Deciphering and regulating the system for bioactive metabolite diversification |
Project/Area Number |
25108712
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
邊見 久 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60302189)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イソプレノイド / アーキア / 膜脂質 / 生合成マシナリー / 糖キャリア脂質 / 呼吸鎖キノン / メバロン酸経路 |
Research Abstract |
アーキア膜脂質の前駆体を生成する大腸菌ベースの生合成マシナリーを用いて、常温性メタン生成アーキアMethanosarcina acetivorans由来のゲラニルゲラニル基還元酵素の活性発現に、その生理的な電子供与体と推察されるフェレドキシンの存在が必須であることを示した。フェレドキシンを介したゲラニルゲラニル基還元酵素の還元は初めて見出された現象である。 また、同マシナリーを用いることで発見されたM. acetivorans由来新奇ゲラニルゲラニル基還元酵素について詳細な特性評価を行った。同酵素はゲラニルゲラニル基あたり1つの二重結合しか還元せず、さらに膜脂質生合成に関わる既知のゲラニルゲラニル基還元酵素に相同性を持たない。既知酵素が膜脂質の完全飽和を触媒できるため、この新奇酵素は膜脂質以外のイソプレノイド生合成に関わることが予想された。そこで生化学的な検証を行い、新規酵素がゲラニルゲラニル基を持つ基質に高い特異性を持つことや、還元部位がω末端のイソプレン単位であることを示した。さらに、M. acetivoransにおいて一部二重結合が還元された糖キャリア脂質が合成されていることを初めて明らかにした。直接的な証拠は無いものの、おそらく同酵素は糖キャリア脂質の生合成に関与していると考えられる。 さらに、好熱性アーキアThermoplasma acidophilumにおいて、3-ホスホメバロン酸を経る変形メバロン酸経路の存在を明らかにし、一部酵素の機能同定を行った。同経路は古典的メバロン酸経路だけでなく、好塩性アーキアなどで最近見出された変形経路とも異なり、いわば第3のメバロン酸経路とも呼べるものである。その全容はまだ解明されていないが、イソプレノイド化合物を合成する生合成マシナリーに導入することで、その生産性を向上させることができるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、大腸菌ベースのアーキア膜脂質生合成マシナリーを活用することで、主要なターゲットであるM. acetivoransから、アーキア膜脂質の構造に影響を与える既知酵素のホモログ、および新奇酵素や機能未知酵素が単離されている。それらの機能解析は順調に進んでおり、特に今年度はフェレドキシンや新奇ゲラニルゲラニル基還元酵素の特性評価を進めることで、それらの生理的機能の推定に至ることができた。特に後者については、おそらく膜脂質ではなく糖キャリア脂質の生合成に関わることが予想されているものの、完全な新奇酵素の発見であり、価値の高い結果と言える。すでに単離済みの推定アーキア膜脂質水酸化酵素についても、酵素発現系の構築が難航し思うように成果が得られていないが、生合成マシナリーにより合成される構造未知の脂質の単離精製を進めている。これらのテーマに関してはおおむね順調に進展していると言って良い。 さらにこれらに加えて、T. acidophilumの新奇変形メバロン酸経路に関する成果が得られている。同経路は3-ホスホメバロン酸を経由する、過去に報告例の無いものである。メバロン酸経路はアーキアにおけるイソプレノイド生合成の上流経路であるだけでなく、我々が生合成マシナリーの構築に用いている大腸菌には存在しない生合成経路である。その導入が大腸菌におけるイソプレノイド生産を改善することは、酵母等のメバロン酸経路関連酵素を用いた既報の研究により明らかである。したがって、この全く新しい経路の発見は、今後イソプレノイド生合成マシナリーの生産性向上を導きうる重要な成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
M. acetivoransより単離した新奇ゲラニルゲラニル基還元酵素については、糖キャリア脂質生合成への関与を示すより直接的なデータの獲得を目指したい。構造解析により同菌の糖キャリア脂質がω還元型ポリプレノールであることを示す、もしくは同菌のシス型ポリプレニル二リン酸合成酵素がジヒドロゲラニルゲラニル二リン酸に高い反応性を有することを示すことで、同酵素の生理機能を提唱できるだろう。また、この新奇酵素のホモログは複数種のアーキアに存在しており、それらの酵素機能や生理的な役割についても調べていきたい。 同様に生合成マシナリーを用いてM. acetivoransより単離された推定アーキア膜脂質水酸化酵素については、MSやNMRを用いることで同マシナリーが生産する推定水酸化脂質の構造決定を進めたい。また、難航している同酵素の異種発現系を大腸菌以外の宿主を用いて構築し、in vitroでの活性検出を可能にすることで、酵素反応機構を明らかにしたい。 T. acidophilumの新奇変形メバロン酸経路については、クローニング済みのメバロン酸 3-ホスホリラーゼより下流に位置する酵素を探索する。これについては、まず複数存在する古典的メバロン酸経路関連酵素のホモログについて活性の有無を検証し、それでも見つからなければ酵素精製による同定を行うつもりである。これまでの結果に基づいて、3-ホスホメバロン酸 5-ホスホリラーゼと3,5-ビスホスホメバロン酸デカルボキシラーゼの存在が予想されており、それらの単離によって同菌の変形メバロン酸経路の全容を解明し、生合成マシナリーへの応用を可能にしたい。
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Research Products
(15 results)