2013 Fiscal Year Annual Research Report
アブイニシオ代謝経路再構築へ向けた反応ネットワーク予測
Publicly Offered Research
Project Area | Biosynthetic machinery: Deciphering and regulating the system for bioactive metabolite diversification |
Project/Area Number |
25108714
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小寺 正明 東京工業大学, 生命理工学研究科, 講師 (90643669)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生合成 / 代謝経路 / 酵素反応 / 機械学習 / バイオインフォマティクス / ケモインフォマティクス |
Research Abstract |
質量分析技術等の発達により生体中に含まれる化合物を網羅的に測定するメタボローム研究が多くの研究者によって進められているが、合成経路が不明な化合物の数は増え続けており、化合物の合成経路やそれに関わる合成酵素を理論的に予測する方法の開発が望まれている。私の研究対象とする「アブイニシオ代謝経路再構築」は、既にデータベース中に登録されている、存在の知られている数百万の化合物の間をつなぐ酵素反応のネットワークを予測することにより、全体として代謝経路をin silicoで再構築することを目指している。 私はこの問題に対し、化合物ペアの「酵素反応らしさ」という概念を考案し、化学構造フィンガープリントを用いた分類問題として定式化した。五分割交差検定により高い予測精度を確認した上で、KEGGデータベース中の15,698化合物から成る246,397,942個の化合物ペアから「酵素反応らしい」化合物ペアを発見するための計算を行なった。計算速度を測定したところ、512 GB のメモリを積んだQuad-Core AMD Opteron Processor (3.1GHz) linux マシンで約1.4時間であった。 私の知る限り、全く同じ目的の研究(多数の化合物間の酵素反応を予測する研究)は過去に例がない。そこで、類似の研究(ひとつの化合物から出発して代謝経路を探索する研究)を用いて同じ目的を達成しようとした場合にかかる時間を推定すると、1化合物から次のステップ(可能な全ての化合物変換)を予測するのに数十秒を必要とするので、合計で数千時間のオーダーになるであろうことが予測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代謝経路予測の計算法の構築および学会発表・論文発表等が順調に進んでおり、当初の計画どおりである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は二値ベクトルによる代謝経路予測から始め、代謝経路予測に適した自然数ベクトルの開発およびそれを用いた代謝予測を行なった。本年度は、これらの方法の発展として、多段階反応ステップ数および中間体化合物の予測、グラフ理論を用いた精密化を行なう。 1、多段階反応ステップ数および中間体化合物の予測 前年度で行なった研究は、2つの化合物が与えられた時に「酵素反応1ステップで代謝されうるか否か」という分類問題を解いていた。この問題は教師セットを変更することで「酵素反応Nステップで代謝されうるか否か」という一般的な問題に拡張可能であると考えられる。また、N=2としたとき、中間体化合物の予測は1ステップ予測で高スコアを得る化合物を双方向から検索することにより行なうことが可能であると考えられる。このN=2の予測を行なうことが出来れば、あとは帰納的にN=3,4,5,...の計算を行なうことが出来る。このようにして計算された多段階反応ステップ数予測および中間体化合物予測は、それぞれAUCによる五分割交差検定およびセルフランクテストによって統計的に精度を見積もることが可能である。 2、グラフ理論を用いた精密化 これまで用いて来たベクトルによる予測法は計算が高速であるという利点があるが、位置異性体が原理的に区別できないなどの問題点を含んでいた。本年度の研究ではこれにグラフ理論を組み合わせることにより、ベクトル法に寄る利点を活かしながら、その問題点を補う手法を開発する。
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