2013 Fiscal Year Annual Research Report
アデニル化酵素の機能改変による新規ストレプトスリシン類縁体の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Biosynthetic machinery: Deciphering and regulating the system for bioactive metabolite diversification |
Project/Area Number |
25108720
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
濱野 吉十 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (50372834)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | NRPS / 生合成 / ペプチド / アデニル化 |
Research Abstract |
微生物によって生産されるペプチド系化合物の多くは、マルチモジュール型の非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)によって生合成される。また、ペプチド化合物の構成成分アミノ酸は、NRPSの1つであるアデニル化酵素の基質特異性によって決定される。多くの研究者は、NRPSのモジュール構造をシャッフルすることでペプチド化合物の多様性を創出しようと試みているが、我々は、アデニル化酵素の基質特異性改変による多様性創出を目的とする。 放線菌が生産するペプチド化合物であるストレプトスリシン(ST)は、原核・真核生物の両者に強い毒性を示すことから薬としては利用されていない。STの生合成研究によってST化学構造の多様性を創出することができれば、医薬品リード化合物の創製につながると期待しており、その生合成にNRPSのアデニル化酵素が重要な役割をしていることを明らかにしている。STは、その化学構造にβリジンを有しており、アデニル化酵素はβリジンを基質とする。そこで本研究では、ランダム変異導入によってこのアデニル化酵素の基質特異性を改変し、新規ST類縁化合物の創製を試みる。 我々は最近、アデニル化酵素の活性測定を比色定量(青色)によって簡単に評価できるアッセイ系を確立しており、当初の計画どおり、H25年度は、そのアッセイ系のハイスループット化を行った。さらに、確立した方法にて約8,000の変異型酵素をスクリーニングしたが、現時点で目的の基質特異性を示す変異型酵素は得られていない。また、異なる基質特異性を有するアデニル化酵素を取得するために、ST類縁化合物であるシトロマイシンおよびBD-12生産放線菌からその生合成遺伝子群を取得し、アデニル化酵素のホモログの取得を試みた。シトロマイシンおよびBD-12はグリシン類縁体を有しているが、興味深いことにそれをアデニル化する酵素は存在しないことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の鍵は、アデニル化酵素の基質特異性を評価するアッセイ系のハイスループット化にある。H25年度は当初の予定どおり、そのハイスループット化について検討した。ランダム変異導入したライブラリーを大腸菌に導入し、得られた形質転換体を96穴プレートで培養し、変異型酵素を発現させる条件を確立した。さらに、得られた菌体から小スケールで酵素を精製する諸条件を確定することで、そのハイスループット化を確立できた。 確立できたアッセイ系にて、約8,000の変異型酵素を精製し、その基質特異性評価を行ったが、現時点で目的とする変異型酵素は得られていない。当初の計画では、H25年度内に変異型酵素が得られることを期待していたが、H26年度も継続予定であるので、さらに数千の変異型酵素をスクリーニングし、目的を達成した。 STは、その化学構造にβリジンを有しており、アデニル化酵素はβリジンを基質とする。アデニル化酵素のランダム変異導入にて基質特異性の異なるアデニル化酵素を誘導することは予想以上に困難であることが判明したことから、異なる基質特異性を有するアデニル化酵素の取得を目的に、ST類縁化合物であるシトロマイシンおよびBD-12生産放線菌からその生合成遺伝子群を取得し、アデニル化酵素ホモログの取得を試みた。シトロマイシンおよびBD-12はグリシン類縁体を有しているが、興味深いことにそれをアデニル化する酵素は存在しないことを見出した。したがって、アデニル化酵素だけでなく、全く異なる酵素によってもST類縁新規化合物が創製できる可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アデニル化酵素のライブラリーから、約8,000の変異型酵素をスクリーニングしたが、目的とする変異型酵素は得られていない。そこで、当初の研究計画にはないが、本スクリーニングの前に、大腸菌培養プレート上で一次スクリーニングできる方法の確立を計画している。アデニル化酵素は、その基質アミノ酸のエステル誘導体に対して、エステラーゼ活性を示すことを我々は見出している。そこで、基質アミノ酸のp-ニトロフェノールエステル誘導体を有機合成し、培養プレートに含有することで、基質特異性が改変された変異型酵素を発現している大腸菌を目視で確認できるスクリーニング系を確立する。 また、当初の計画どおり、これまでのスクリーニングの継続とそこから得られた変異型酵素を利用した新規ST類縁化合物の創製にチャレンジする。
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