2013 Fiscal Year Annual Research Report
トリプトファンイソプレニルトランスフェラーゼのメカニズム解明とマシナリーの構築
Publicly Offered Research
Project Area | Biosynthetic machinery: Deciphering and regulating the system for bioactive metabolite diversification |
Project/Area Number |
25108724
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
岡田 正弘 中部大学, 応用生物学部, 講師 (40377792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 翻訳後修飾 / イソプレニル化 / トリプトファン / 枯草菌 / クオラムセンシング |
Research Abstract |
枯草菌由来のComXフェロモンのC末端側のトリプトファン残基をイソプレニル化する修飾酵素であるComQの基質結合部位であると考えられた、NDYYGのアミノ酸配列部分を中心に、それぞれのアミノ酸をそれぞれ変異させた各種ComQ変異体を分子生物学的手法を用いてそれぞれ作製した。得られた変異体をそれぞれ粗精製を行った後に、ゲラニル二リン酸およびマグネシウムイオン存在下、前駆体ComXのin vitro酵素反応による生合成産物をLC-MS/MSを用いて定量した。その結果、ComQのNDYYGのアミノ酸配列のうちの2番目のアスパラギン酸残基が酵素活性に必須であることを明らかにした。同様にして、3~5番目のアミノ酸残基は酵素活性に重要でないことを明らかにした。一方で、NDYYGのアミノ酸配列のうちの1番目のアスパラギン残基は酵素活性に重要であり、特に、アスパラギン酸残基に置換した場合は、酵素活性が消失することを明らかにした。修飾酵素ComQは、テルペン類の生合成前駆体であるイソプレニル二リン酸の生合成酵素と相同性があるため、イソプレニル二リン酸生合成酵素であるかトリプトファンイソプレニル化酵素であるか判別できなかったが、今回得られた結果は、イソプレニル二リン酸の生合成酵素とは異なる傾向を示したため、トリプトファンイソプレニル化酵素とイソプレニル二リン酸生合成酵素の違いを生み出すアミノ酸残基を見いだすことが出来たと考えられた。 さらに、枯草菌の近縁種である納豆菌由来のComXフェロモンや修飾酵素ComQに関しても研究を行い、納豆菌由来のComXと、納豆菌由来の修飾酵素ComQのin vitro 酵素反応を行った結果、枯草菌由来の修飾酵素ComQより、納豆菌由来の修飾酵素ComQの方が基質特異性が低いため、生合成マシナリー構築に適していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、ComXフェロモンのC末端側のトリプトファン残基をイソプレニル化する修飾酵素であるComQの基質結合部位であると考えられた、2カ所のアスパラギン酸リッチモチーフのアミノ酸配列部分が、酵素活性に必須な基質結合部位であることを明らかにする研究計画であった。前述の研究実績の概要でも述べたように、2カ所のアスパラギン酸リッチモチーフのうちの一つに含まれるNDYYGのアミノ酸配列のそれぞれのアミノ酸をそれぞれ変異させた各種ComQ変異体の酵素活性は、イソプレニル二リン酸の生合成酵素とは異なる傾向を示したため、トリプトファンイソプレニル化酵素とイソプレニル二リン酸生合成酵素の違いを生み出すアミノ酸残基を見いだすことが出来たと言える。この結果をベースに相同性検索を行うことで、イソプレニル二リン酸生合成酵素であるか、トリプトファンイソプレニル化酵素であるかが判別できるようになったと考えられる。さらに、枯草菌の近縁種である納豆菌由来の修飾酵素ComQの方が枯草菌由来の修飾酵素よりも生合成マシナリー構築に適していることも見いだした。これらの結果は、平成26年度の研究計画である、トリプトファンイソプレニル化酵素におけるコンセンサス配列の決定への契機となる結果であるため、現在までの達成度はおおむね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画である、トリプトファンイソプレニル化酵素におけるコンセンサス配列の決定へむけて、平成25年度に決定したComQの酵素活性に必要なアミノ酸残基を有し、イソプレニル二リン酸合成酵素と相同性の高いタンパクをコードする遺伝子をデータベースから検索し、候補を選別する。続いて、候補遺伝子をそれぞれ大腸菌、もしくは酵母に導入して候補タンパクを過剰発現させ、培養液から粗酵素溶液を調製し、in vitro酵素反応によりトリプトファンイソプレニル化酵素であることを証明する。しかし、従来用いていた長鎖トリアコンチルカラムを用いたLC-MS/MSでは分離困難であると考えられるため、新たにODSカラムや、短鎖のシアノカラムを用いた分析条件を確立する計画である。一方で、生合成マシナリー構築に向けては納豆菌由来の修飾酵素の方が枯草菌由来の修飾酵素よりも適していると考えられたため、in vitro酵素反応による生合成産物が、トリプトファンがイソプレニル化されたペプチドであることをLC-MS/MSを用いた各種分析や、有機合成により証明する。また、納豆菌に関してはトリプトファンがイソプレニル化されたComXフェロモンが納豆菌のネバネバ物質であるガンマポリグルタミン酸の生合成に関与している可能性が示唆されているため、トリプトファンイソプレニル化酵素の生物学的な価値を上げるためにも納豆菌由来のComXフェロモン、およびその修飾酵素であるComQと納豆菌のガンマポリグルタミン酸の生合成の関係についても明らかにする計画である。
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