2013 Fiscal Year Annual Research Report
生合成マシナリー構築に向けたロドコッカス属細菌の宿主最適化と遺伝子ツールの拡充
Publicly Offered Research
Project Area | Biosynthetic machinery: Deciphering and regulating the system for bioactive metabolite diversification |
Project/Area Number |
25108728
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
北川 航 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (60415669)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生合成マシナリー / バイオテクノロジー / 抗生物質 / 遺伝子 / 微生物 |
Research Abstract |
1. 宿主の選択と育種 これまでに遺伝子(プラスミド)保持安定性の高いD32株を選抜した。しかし本株は他の宿主候補であったR09株と比較し、培養時に細胞凝集性が高く、生育速度がやや遅いと言う欠点もあった。この性質が改善された変異株を得るため、プロトプラストリジェネレーションを繰り返し、コロニーがスムース型に変異したクローンの取得に成功した。本変異株は液体培養時に細胞凝集性が無く、生育速度も親株と比較し非常に高くなっていた事から、D32Aと命名し新たな宿主としてさらなる改変へ用いる事とした。 2. 発現ベクターの開発 ロドコッカス用の発現ベクターはこれまでに2種のレプリコン、2種の選択薬剤と耐性遺伝子、4種の発現プロモーターの組み合わせによる各バリエーションを開発していた。これらに加え、新規のプロモーターとして2種の構成的発現プロモーターとベンゾエート誘導型プロモーターを開発した。構成型プロモーターは既存の強い発現強度の物と比較し、約1/2、1/4と弱めた物を準備した。ベンゾエート誘導型は既存のチオストレプトン誘導型とは異なり、誘導剤が細胞に与える負担が低く、耐性遺伝子を持たせる必要が無い利点がある。また誘導剤にかかるコストも数十分の1に抑える事が出来る。 3. 生合成遺伝子クラスターの発現 aurachin REはR. erythropolis JCM 6824が生産するキノロン環抗生物質で、その生合成遺伝子・経路について我々のグループで解析を進めている。本テーマではこのaurachin REの生合成遺伝子をモデルとし、ロドコッカス属による抗生物質の異宿主生産を試みた。いくつかのロドコッカス宿主に導入し、aurachin REの生合成を試みたところ、上述のD32で最も良い生産性を得る事が出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はロドコッカス属細菌を宿主とし、生合成マシナリーの新しいシステムの開発を行うことを目的としている。これまでに遺伝子の安定性の高い宿主の選抜に成功し、このドラフトゲノム解析も行っている。ロドコッカス属のゲノムサイズは10M程度とバクテリアとしてはかなり大きい方であり、また大規模な繰り返し領域(領域長、およびコピー数の多さ)の問題、さらに巨大線状plasmidを保有することからも、完全ゲノム情報を構築する事はかなり大変な作業である。しかし生合成マシナリーの宿主として用いるには不可欠であることから、複数種の次世代シーケンサーを用いた配列解析も着手した。また発現ベクターとしては多数のレプリコン、多数の誘導型、構成型プロモーター、多数の選択薬剤マーカー遺伝子などの組み合わせにより多彩な選択肢を供給できる状態に出来ている。また上記宿主・ベクター系を用い、ロドコッカスでは初の組換え体による抗生物質生産に成功している。これらのことから本研究は概ね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子の追加と削除:外来遺伝子の安定化に寄与するとして選定された遺伝子のうち削除する対象については、相同組換えを利用したマーカーレス遺伝子破壊法を用いる。本手法を繰り返すことで1つの株に多数の変異を痕跡無しに累積させる事が可能である。また大きな領域をまとめて削除する場合は、ロドコッカスではまだ実績がないが、ストレプトマイセスで成功しているCre/loxPの手法を応用出来ると考えている(Streptomyces avermitilis SUKAシリーズ、北里大学)。また追加する対象についてはプラスミドに組み込む、あるいはゲノムに挿入する、のどちらかで実行する。またこのようにして改変、構築した宿主の形質を慎重に評価する。プラスミドの安定性の試験は24年度までに簡易な方法を考案しているが、試験の性格上時間がかかるものであるので、改変候補が得られ次第順次進める。またベクター開発についても引き続き多様性を増やし、新規のプロモーターについてはその発現の強度や誘導のパターン、最適な誘導時間等を測定する。また本研究で得られた新規宿主、発現ベクターを用いて抗生物質等の物質生産を試み、生合成マシナリー宿主としての性能を元株と比較しながら検証する。
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Research Products
(8 results)