2013 Fiscal Year Annual Research Report
活性部位の複合化による感応性化学種の制御を利用した酸化酵素の設計と創製
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109501
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石森 浩一郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20192487)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヘム / 酸素活性化 / 鉄イオン / 非ヘム鉄 / 金属蛋白質 |
Research Abstract |
本年度の研究実績の概要は以下のとおりである. 非ヘム鉄結合部位の形成機構 ヘム依存性転写因子Irrの酸化修飾反応の経時変化を紫外可視吸収およびEPRスペクトルで追跡した結果,Soret帯の強度減少に対応した非ヘム鉄に由来するg=4.3付近のEPRシグナルが観測された.このことは,Irrに結合したヘムが分解され開環し,そこで遊離した鉄イオンがIrrと結合することで,非ヘム鉄部位を形成したことを示している. 活性化Irrの立体構造決定 非ヘム鉄結合部位を形成した活性化Irrの立体構造を決定するため,NMRやCDを用いてその構造解析を試みた.まず,酸化修飾を受けていないIrrを単離,精製するため培養条件を検討し,MSスペクトルで酸化修飾していないIrrの精製を確認した.ヘム存在下でのIrrのCDスペクトルは,変性蛋白質の特徴を示し,Irrはその構造の一部が一定の構造を形成していない天然変性蛋白質であることが示唆された.NMRについても一部のシグナルが重畳しており,局所的な変性構造が推定された. 酸化修飾反応課程におけるヘム結合部位および非ヘム鉄結合部位の構造変化 ヘム結合部位や非ヘム鉄結合部位を同定するため,N末端側のHRM配列中のCysとC末端側のHisクラスター領域に注目した.それぞれの部位のアミノ酸置換Irrの酸化修飾反応の結果から,C末端側のHisクラスター領域に結合したヘムが分解され,非ヘム鉄結合部位を形成することが示された. アミノ酸置換による基質結合部位の導入 非ヘム鉄結合部位付近に基質結合部位を形成させるため,Hisクラスター領域に系統的にアミノ酸置換をを導入したが,Hisクラスター領域へのアミノ酸変異の導入は酸化修飾反応の阻害につながり,基質の酸化には至らなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した研究計画の項目に対する達成度は以下のとおりである. 非ヘム鉄結合部位の形成機構 ヘムの分解と非ヘム鉄結合部位の形成を分光学的に確認でき,またその両者の相関も明らかにすることができたので,当初の目的は達成されたと考えられる. 活性化Irrの立体構造決定 立体構造の決定には至らなかったが,Irrがその一部構造に構造的に揺らぎの大きな部分を有する天然変性蛋白質であるという知見が得られ,これは当初期待されていなかった興味深い知見である.天然変性蛋白質の特性上,明確な構造決定は困難であるが,Irrの構造上の特徴を見出したという点で当初の目的はほぼ達成できたと考えられる. 酸化修飾反応課程におけるヘム結合部位および非ヘム鉄結合部位の構造変化 部位特異的アミノ酸置換の結果から,ヘムを分解し鉄を遊離させ,非ヘム鉄結合部位を形成する部位がHisクラスター部位であることが同定でき,酸化修飾部位についてもそのアミノ酸残基を同定した.したがって,当初の目的はほぼ達成できたと考えられる. アミノ酸置換による基質結合部位の導入 実際の基質の酸化反応については達成できていないが,活性部位の構造については詳細な情報を得ることができた.この項目については,来年度に引き続いて検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度十分はほぼ順調に実験は遂行できたが,Irrへのアミノ酸置換による基質結合部位の導入については,実際の基質の酸化反応までには至らなかった.しかし,活性中心部位である非ヘム鉄付近の構造情報は集積してきており,その構造情報を元に,今年度は部位特異的なアミノ酸置換によって効率的な基質結合部位の導入を目指す.
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