2013 Fiscal Year Annual Research Report
低配位二座リン配位遷移金属触媒を用いる高周期へテロ元素化合物の合成
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109503
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有澤 美枝子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50302162)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 高周期へテロ元素 / ロジウム触媒 / 単結合メタセシス反応 / 有機イオウ・リン化合物 / 低配位二座リン配位子 / アリール転位反応 |
Research Abstract |
ロジウム触媒法を用いて、高周期ヘテロ元素化合物の高効率合成反応を検討した。これまでに、イオウ単体を用いてポリフルオロベンゼンのスルフィド化反応を明らかにした。これをもとに、今回、芳香族スルフィドAr-S結合切断を伴う変換反応を開発した。即ち、ロジウム触媒条件下、芳香族スルフィドに芳香族スルフィドおよび芳香族フッ化物を反応させると、アリール交換によって新たな芳香族スルフィドを与えた。このようなAr-S結合切断を伴う芳香族スルフィド合成はこれまでになく、本法は新しい非対称芳香族スルフィドの合成法である。一連の研究によって、イオウ単体をイオウ源にして対称芳香族スルフィドを合成した後、触媒的アリール交換反応によって様々な非対称芳香族スルフィド合成が可能であることを示した。 これらの結果に加えて、ロジウム触媒を用いて、ヘテロアリールメチルケトンとヘテロアリールエーテルから非対称ジヘテロアリールメタンを与える高効率合成法を見出した。ここでは、電子不足および電子豊富な種々の複素環を有するヘテロアリールエーテルC-O結合とヘテロアリールメチルケトンC-C結合開裂を伴う多様な非対称ジヘテロアリールメタン合成を行った。また、フタルイミドC-N結合とチオエステルC-S結合及び酸フッ化物C-F結合間の相互変換反応を開発した。ここでは、窒素、イオウ、フッ素原子の捕捉剤を工夫して、基質を過剰に用いることなく平衡移動できた。 一連の研究の過程で、種々の芳香族へテロ元素化合物のアリール基を他のヘテロ元素(S, Se, Te, P, As)上に転位する触媒反応を見出した。今後、ヘテロ元素捕捉剤を用いる平衡制御法を利用して効率化を検討する。これらは、ロジウム触媒が高周期へテロ元素化合物の合成と変換に利用できることを示す結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ロジウム触媒が高周期へテロ元素化合物の合成と変換に利用できることを示した。この過程で、有機リン化合物の触媒的合成法について新しい知見を得た。ロジウム触媒を用いて芳香族ホスフィンスルフィドと芳香族スルフィド間の相互変換反応を行うことができた。ここでは、ホスフィニル化剤にジホスフィンを利用できることを示した。この結果を、リン単体を直接用いる反応に展開する目的で、リン原子に挟まれたP-P-P結合の切断変換反応を検討した。ロジウム触媒存在下、芳香族スルフィドとポリホスフィン(PhP)5から芳香族ホスフィンを合成する反応を見出した。この反応は、(PhP)5の代わりにポリアルシン(PhAs)6を用いる反応に適用できることがわかった。 加えて、芳香環C-H活性化を含む芳香族リン化合物のロジウム触媒ホスフィニル基転位反応を見出した。これは、芳香環C-Hを直接ロジウム触媒的にホスフィニル化できることを示唆する。 以上の結果から、芳香族スルフィドの反応に加えて、ロジウム触媒が芳香族リン化合物Ar-P結合の生成、切断、変換を行えることを示し、当初の計画以上の成果を見出している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ロジウム触媒を用いると、有機金属試薬や塩基を用いずに、無機塩を副生しない高周期へテロ元素化合物の合成反応を行えることを示した。高周期へテロ元素化合物は第2周期へテロ元素化合物と比較して結合エネルギーが弱く酸素等に不安定であるので、用いるヘテロ元素試薬の構造を変えながら、原系と生成系の熱力学的安定性を微調整して、効率よく望みの生成物を得る系を構築する。加えて、触媒の活性を向上させることが必要である。今後、リン原子間に二炭素鎖挟んだ二座低配位リン配位子を合成し、高周期ヘテロ元素化合物の触媒的合成に適用する。具体的には、配位子のσ供与能とπ逆供与能を制御する目的で、π逆供与可能なリン原子を二つ有するσ供与/π逆供与型二座配位子とπ逆供与可能なリン原子とσ供与性のリン原子を有するσ供与・σ供与/π逆供与型二座配位子を合成する。ロジウム・パラジウムと錯形成させ、複数の高周期へテロ元素(S, P, Si, As, Se, Cl, Te 等) の活性化を多面的に行い触媒活性を評価することで、本研究の目的を達成できると考えている。
|
Research Products
(8 results)