2013 Fiscal Year Annual Research Report
構造ストレスを利用した多感応性機能分子の創製と機能
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109506
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鍋島 達弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80198374)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 発光性ケイ素錯体 / 発光性ゲルマニウム錯体 / 応答性典型元素錯体 |
Research Abstract |
典型元素を有する化合物は配位環境から電子的・構造的な摂動を受けるとその構造と反応性・物性が大きく変化するので、この手法により新規な機能を容易に発現させることができる。そこで本研究では優れた発光特性をもつジピリン錯体に注目し、構造ストレスを利用した感応性典型元素化合物の創製を目的に検討を行った。またジピリン配位子の中でも、特にN2O2型四座配位ジピリンを用いることで、様々なジピリン錯体を合成し,その構造および発光挙動を明らかにした。 昨年度からの研究をさらに推進し、N2O2型ジピリンのすず錯体の合成に成功した。このジピリン錯体においては、すず原子が関与する分子間結合の形成により二分子が集積し、すず原子は六配位構造を取ることを明らかにした。対応するケイ素,ゲルマニウム錯体は五配位構造の単量体がより安定となることから、すずのルイス酸性の高さにより二量体を形成していると考えられる。 その他の例として、剛直な構造をもつBODIPYのためのジピリンとして、拡張したπ平面をもつジピリン誘導体の合成検討を行い、新規な環化反応による合成法を開発した。各種典型元素錯体の合成については今後検討を行う。この合成経路において、目的の化合物の前駆体となる柔軟な骨格を持つ分子の光学特性が、非常に高い溶媒効果を受けることを見出した。ここで置換基として導入したメトキシ基の置換位置がその溶媒効果の程度に非常に大きな影響を持つこともわかった。溶媒を変えることで発光ゼロから高量子収率まで、その程度は極めてダイナミックに変化する。この変化の原因は光誘起電子移動の効果が大きいと考えられるが、分子のコンホメーション変化も少なからず影響を与えていると考えられる。これについても今後の検討課題であり、種々の検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回新しくジピリンのすず錯体の合成に成功し、Si、Ge錯体とその構造及び物性を比較検討して、中心元素の反応性や発光特性に及ぼす効果について明らかにすることができた。ジピリンの典型元素錯体はこれまでほとんどがホウ素錯体であり、このような系統的検討による知見ははじめてのもので、今後のジピリンの化学に与える波及効果は大きい。 また当初に目的とした大きなπ平面を持つジピリンの合成に成功しただけでなく、その過程において新規な合成反応の開発にも成功した。また中間体である柔軟な骨核をもつジピリンはホウ素錯体に変換することができ、これらが発光特性において非常に高い溶媒依存性を示すことを明らかにした。つまり、適当な外部因子捕捉部位を導入すれば、ゲスト捕捉によって構造ストレスを受け、発光特性が大きく変化するセンサーの開発にもつながる基礎的知見を得ることができた。以上の理由より本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
目的とする分子は以下に示した昨年度の方針を継続して合成し、機能評価を行うとともに、前年度までに得られた知見を元に分子の構造最適化を行うことで目的の達成を図る。 ピロール環がナフタレン環などと縮環した平面構造をもつジピリン類縁体を合成し、種々の典型元素錯体を合成する。これらのもつ構造ストレスに起因した物性、反応性を明らかにし、構造変換、機能の外場・外部刺激応答性を調べ、多感応性の機能性化学種の創製を行う。剛直な環状構造による構造ストレスで生じる近傍の二つの元素間の直接的相互作用、および配位子を介して伝わる間接的作用を利用して機能創出を図り、感応性化学種を合成する。分子の骨格の外側に窒素原子をもつ複素環やポリエーテルなどを導入してゲスト捕捉部位とし、金属イオンやゲストの添加によって分子構造に摂動を加えることで構造ストレスの変化に伴う光学特性のコントロールが可能な多感応性の化学種を創出する。
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Research Products
(63 results)