2013 Fiscal Year Annual Research Report
感応性酸化活性種としての高原子価ルテニウム錯体の合成と反応性
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109507
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 隆彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20264012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高原子価ルテニウム錯体 / 電子状態 / 酸化反応 / プロトン共役電子移動 / 反応機構解析 |
Research Abstract |
ルテニウム(IV)-オキソ錯体及び高原子価ルテニウム―ナイトライド(Ru≡N)錯体の反応性及び基質酸化機構の本質に迫ると共に、高効率な酸化触媒系の構築を目指す。これらを通じて、生体内酸化反応で重要な「感応性化学種」としての高原子価金属錯体の反応性を探求する。 1.N4Py (N4Py = N,N-bis(2-pyridyl-methyl)-N-bis(2-pyridyl)-methylamine)を配位子とするRu(II)-アンミン錯体を合成し、結晶構造解析、各種分光分析、電気化学測定によるキャラクタリゼーションを行った。その結果、Ru(II)-アンミン錯体の酸性水溶液中における電解酸化により、Ru(V)-イミド(NH)錯体の生成とそのキャラクタリゼーションを行った。また、そのRu(V)-イミド錯体は、1.5倍モルの2電子供与体であるヒドロキノンと反応して、Ru(II)-アンミン錯体に戻ることが確認された。さらに、Ru(V)-イミド錯体は、ベンジルアルコールをベンズアルデヒドに酸化することを見いだし、速度論解析を行った。 2.Me2Py5 (Me2Py5 = 2,6-bis(1,1-bis(2-pyridyl)ethyl)pyridine)を配位子とするRu(II)-アクア錯体を合成し、その酸化により、酸化活性なRu(III)-ヒドロキソ錯体を合成した。その錯体による緩衝水溶液中での基質酸化反応について、速度論的解析を行った。その結果、基質からの電子移動のドライビングフォースが0.6 eVにおいて、基質酸化機構が、水素移動反応から電子移動反応へと切り替わることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Ru(II)-アンミン錯体のプロトン共役電子移動(PCET)酸化によるRu(V)-イミド錯体の生成とキャラクタリゼーションについて、世界で初めて成功した。さらに、その反応性について、ベンジルアルコールのベンズアルデヒドへの酸化、2-プロパノールのアセトンへの酸化などを明らかにした。さらに、前者の反応について速度論的解析を行い、速度論的同位体効果が1.2と小さいことを明らかにした。また、その他の基質に関する酸化反応も進行することが明らかとなり、これまで知られていないRu(V)-イミド錯体の反応性と性質を明らかにしつつある。 一方、これまで殆ど知られていない、Ru(III)-ヒドロキソ錯体による水素引き抜き過程を伴う基質酸化反応において、基質の酸化還元電位、すなわち基質からRu(III)中心への電子移動のドライビングフォースに依存して、その反応機構が電子移動律速から水素移動律速へと切り替わることが明らかになった。 これらの成果については、近日中に論文としてまとめて投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Ru(IV)-オキソ錯体によるシクロヘキセンの酸化反応において、C=C二重結合の酸化(エポキシ化)とアリル位C-H酸化の選択性が、どのような要因によって制御されるかについて検討する。特に、溶媒の極性に着目し、生成物の変化、速度論的解析による速度論的パラメータの決定を通じて、溶媒効果の本質に迫りたい。また、プロトンや金属イオンといったルイス酸の相互作用による、Ru(IV)-オキソ錯体の反応性の変化についても明らかにしたい。
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Research Products
(43 results)