2013 Fiscal Year Annual Research Report
物理的刺激で発光する有機π共役系化合物の創出と分子内電荷移動機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109515
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西田 純一 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70334521)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / 分子性固体 / 誘電体物性 / 有機化学 / 超分子化学 |
Research Abstract |
非対称型の分子は大きな双極子モーメントを有し結晶中では多くの場合その双極子を打ち消すように対称心を持って配列するが、中には対称心を持たずに配列し大きな非線形光学特性や圧電性、焦電性を与える場合がある。このような対称心を持たない結晶から、摩擦力や圧力を加えることによって“光”を取り出すトリボルミネッセンス(TL)が報告されている。私達は、これまでにトリフルオロメチル基を有するN-フェニルイミド化合物群が、鮮やかな青色のTLを示すことを報告している。一方、これらイミドの固体発光量子収率は高いもので4%程度であり光り易い化合物とは言えず、より発光効率の高い構造に変え、より強いTL特性が得られると考えて研究を開始した。25年度においては分子内電荷移動(ICT)発光特性を期待させるドナーアクセプター型の化合物の設計と合成評価を主に行った。 標的とした化合物は先に研究を行っているイミド化合物にさらにπ共役系を導入するというアプローチである。フタルイミド化合物にオリゴチオフェンを導入したドナーアクセプター型の化合物が力学的な刺激に際して強いTLを与えることを明らかにした。これらの化合物は大きな双極子を有するにもかかわらず先に研究されていた無置換の化合物と同様に結晶中対称心ない整った層構造を形成させることをX線結晶構造解析によって明らかにしている。これらの化合物は発光特性に加えて、刺激に際して固体の色調変化や電子スピン共鳴 (ESR) に活性なシグナルを生じさせることを明らかにしている。 イミド化合物からカルバゾールを含む化合物系に展開した。トリフルオロメチルフェニル基を一つ導入した化合物では、対称心ない分子配列が構築されることを見出している。これらのカルバゾール誘導体はTLを示し、さらに燐光性の錯体を添加することで発光色を大きく変化させることができることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
通常の有機化合物の開発研究において、結晶中に対称心を持たない分子配列を好むπ共役系化合物を設計し構築することは本来難しいことであるが、本研究で合成した化合物は高い確率でそのような構造を構築することを見出している。これにより、共役系を拡張した場合や原子をかえた場合におきにどのような変化が起こさせるか研究することが可能となった。これは分子構造と物性との相関関係を調査する研究に大きく貢献する結果である。さらにTLに重要である固体内での電子移動について知見を与えるように刺激によって固体物性が変化することを明らかにした。この結果は多重の応答系を構築する上でも重要な発見であると考えられる。これらの発見は当初の研究計画を大きく超える発見と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究を引き継ぎ、分子内電荷移動型のTL特性を与えるドナーアクセプター型の化合物を設計し、合成評価を行う。発光特性に加えて色調変化やESRを与えているラジカル種に関してより詳細な研究を行いたいと考えている。オリゴチオフェンからフランやセレノフェンのような他のカルコゲン原子を含む化合物を合成し、原子をかえた場合に起きる変化について考察を行う。カルバゾールを含む研究においては燐光性錯体へのエネルギー移動に関して詳細な研究を行うと共に、窒素原子をリン等の他の原子にかえた場合に起きる変化について現在検討を行っている。
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Research Products
(9 results)