2013 Fiscal Year Annual Research Report
三重架橋ボリレン配位子の光感応性を用いた新規多核反応場の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109516
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高尾 俊郎 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00313346)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ポリヒドリドクラスター / 三重架橋ボリレン / 三重架橋オキソボリル / クラスターの光反応 |
Research Abstract |
重水素を用いたラベル実験によって,BC2三員環形成の際に三重架橋ボリレン配位子の移動反応が,ボリレン上のBH結合の切断を伴わない機構で進行していることが明らかとなった.この結果は、三重架橋ボリレン配位子が可視光を吸収することで二重架橋ボリレンへと異性化し,続いてRu-Ru結合の切断を伴いながら三核平面の反対側に位置するアルキン配位子とカップリングしたことを表わす結果である.これまでにも三重架橋ボリレン配位子を有する錯体は数例知られてはいたが,このように金属上でボリレン配位子がダイナミックな挙動を示すことを明らかにできたのは本研究がはじめてである. また,三重架橋ボリレン錯体と水との反応では,三重架橋オキソボリル錯体が得られることを明らかにしてきたが,BHからBOへと三重架橋配位子が変化することでクラスター上のアルキン配位子が動的な性質を示さなくなった.これは三重架橋オキソボリル配位子のシグマ供与性が非常に強いことを示す結果であり,これまでに理論的にしか予測されていなかったオキソボリル配位子の性質を実証することができた重要な成果である. オキソボリル錯体の生成機構については,まず水がホウ素へ求核的に攻撃し,次いで配位した水分子からプロトンが金属上に移動することで三重架橋ヒドロキソボリレン中間体が生成することが明らかとなった.ヒドロキソボリレン錯体からの脱水素と更なるプロトンの金属上への移動によってオキソボリル配位子が生成するものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光反応による三重架橋ボリレン配位子の活性化様式を絞り込めたことにより、励起状態のイメージをつかむことができた。また、三重架橋錯体の効率的な合成法の開発にも成功し、その性質および反応性を明らかにする上で大きな進展があったものと考えられる。しかし、水以外の基質との反応については検討できておらず、励起種と基質との反応については今後の課題と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
三重架橋ボリレン配位子が架橋ボリレンへと異性化することでクラスター上には配位不飽和座が形成されるものと考えられる。加えてホウ素のルイス酸性を活かすことで、分極した遷移状態を経由する不活性小分子の速やかな活性化が期待できる。今後は光照射下での窒素や二酸化炭素などの不活性な基質との反応について検討する。また、オキソボリル配位子の高いσ供与性を活かした反応の開発についてもあわせて検討する。
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