2013 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素配位子の動的挙動を活用する新触媒開発
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109519
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鷹谷 絢 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (60401535)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 合成化学 |
Research Abstract |
以前,PSiP-ピンサー型配位子を持つ平面四配位型ボリルパラジウム錯体を鍵活性種とするアルケン類の脱水素ボリル化反応を開発することにで成功している。そこで本年度は,本触媒反応の鍵となるPSiP-ピンサー型配位子を持つボリルパラジウム錯体の生成機構と反応性について検討した。その結果,従来のボリルパラジウム錯体の形成機構が酸化的付加,あるいはトランスメタル化によって進行するのに対し,本反応ではシラン配位パラジウム錯体あるいはパラジウムヒドリド錯体とジボロンとの間で可逆なσ結合メタセシスが2通り進行するという,新しいホウ素-パラジウム結合形成機構を見出すことに成功した。またこの新しい結合交換反応を利用することで,単座ホスフィン配位子を適切に選択することで,5配位ボリルパラジウム錯体の立体異性体を選択的に作り分けることにも成功した。5配位パラジウム錯体は通常不安定であり,また擬回転機構による異性化を極めて容易に起こすことから,その立体異性体を作り分けた例はこれまでに無く,大変興味深い。さらにこれらの錯体が加熱条件ではトランス体からシス体への熱的異性化を起こすことも見出し,またその反応機構について速度論的検討を行った結果,珍しいturnstile機構で異性化が進行していることを明らかにした。これらの成果は,感応性化学種としてのケイ素配位子の動的挙動を活用することで,これまでにないσ結合メタセシス反応が実現可能であることを示すものであり,本新学術領域研究の進展に寄与する重要なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高反応性触媒活性種であるPSiP-ピンサー型配位子を持つボリルパラジウム錯体の生成機構と反応性について検討した結果,新しいσ結合メタセシスによるホウ素-パラジウム結合の形成機構を明らかにすることができた。さらに2通りの可逆な反応経路が存在することを活用し,5配位ボリルパラジウム錯体の立体異性体を作り分けることに成功した。これらの成果は,感応性化学種としてのケイ素配位子の動的挙動を活用することで,これまでにないσ結合メタセシス反応が実現可能であること,ならびに性質の異なる活性種を作り分けられることを示すものである。今後はこれらの反応を活用することで,新しいホウ素化合物ならびに類縁体の合成反応開発へと展開できるものと期待できることから,本新学術領域研究の進展に寄与する重要な成果として意義深いため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出した2通りの可逆なσ結合メタセシスによるホウ素-パラジウム結合形成反応を活用した新しい触媒反応開発を行う。また,ホウ素との類似性に着目し,アルミニウム化合物と不飽和炭化水素との反応についても検討する。これらの検討を通して,感応性化学種としてのケイ素配位子の有用性を実証するとともに,効率的物質合成手法の開発を目指す。
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Research Products
(23 results)