2013 Fiscal Year Annual Research Report
[NiFe]ヒドロゲナーゼに学ぶ感応性モデル錯体の合成と水素分子代謝
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109522
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大木 靖弘 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324394)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鉄 / ニッケル / ヒドロゲナーゼ / 水素 / チオラート |
Research Abstract |
代表者らはFe-Ni-Ni-Fe四核錯体とかさ高いチオラートNaSDmp (Dmp = 2,6-(mesityl)2C6H3)の反応から、[NiFe]ヒドロゲナーゼモデル(CO)3Fe(StBu)3Ni(SDmp)が生成することを見いだしている。 (1) 種々のかさ高いチオラート配位子を有する活性部位モデル合成 Dmpチオラートの代わりに種々のかさ高いチオラートを有するFe-Ni二核モデル錯体の合成を検討した。例えば松尾(A01班)らの協力を得てEind基を持つチオラートNaSEindをFe-Ni-Ni-Fe四核錯体と反応させ、モデル錯体(CO)3Fe(StBu)3Ni(SEind)を合成した。また、時任(A03班)らが開発した独自の置換基Tbtを利用し、同様にモデル錯体の合成を検討したが、生成物は不安定であり-40Cでも分解した。SEind, STbt以外にもSC(SiMe3)3配位子、SDxp配位子(Dxp = 2,6-(xylyl)C6H3)も用い、Fe-Ni二核錯体を合成した。 (2) 活性部位モデルとH2の反応 上記(1)で得られた一連のモデルをヘキサンに溶解させ、錯体が熱分解しない-40CでH2と反応させた。DmpチオラートおよびEindチオラートを持つモデル錯体は徐々にH2と反応し、チオールを遊離するとともに褐色の沈殿を与えた。生じたHSDmpのNMR収率は77%であった。褐色の沈殿のIRスペクトルでは、Fe-Ni-Ni-Fe四核錯体に似た波数とパターンでCO伸縮が観測され、一方で褐色の沈殿の蛍光X線分析ではFe-Ni-Ni-Fe四核錯体に存在するはずの臭素が観測されなかったことから、Fe-Ni-Ni-Fe四核錯体と構造が類似したヒドリド錯体が生成したと予想している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
かさ高いチオラートを有する一連のヒドロゲナーゼモデルの合成に成功し、そのうち二種類が低温でもH2と反応することを見いだした。特にこの反応では、Ni-S部位がH2活性化に関与するとカンガエラレている生化学分野の研究結果と良く符合し、ニッケル上のチオラート配位子がチオールとして解離する様子が見られた。先例のない反応であり、重要な発見と位置づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル錯体とH2の反応により生じた褐色沈殿の同定、ならびに同位体標識実験を通して、H2活性化がNi-S部位で起きていることの証明を目指す。また、モデル錯体の熱的安定性の担保を目指して、COの一部をイソシアニドに置換したモデル錯体の合成を目指す。さらに、還元型の活性部位モデルとなる新規Fe-Ni錯体の合成も検討する。
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