2013 Fiscal Year Annual Research Report
短波長X線回折による精密構造解析と分子軌道観測
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
25109543
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
橋爪 大輔 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, ユニットリーダー (00293126)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 電子状態 / ラジカル / ポルフィリン |
Research Abstract |
本研究は、①実験室における高周期元素化合物結晶の高精度・高確度X線回折法の開発、②フロンティア軌道分布の直接観察法開発を目的として行っている。今年度は、電子占有率の少ない軌道を高精度に観測できるデータ収集法の開発を行った。また、高精度なX線結晶構造解析を担当し、当該新学術領域研究班員と共同研究を行った。以下の平成25年度の成果について述べる。 1. 一重項ビラジカルの電子密度分布解析: P-C-P-C による4員環一重項ビラジカルにおいて、不対電子は主として4員環内の炭素原子の2p軌道に存在していると考えられる。そこで、この骨格を持つビラジカル2種の高精度単結晶X線構造解析、および、多極子展開法による電子密度分布解析を行った。この結果、解析した2種のビラジカルから同じ特徴の電子密度分布が得られた。不対電子は4員環上の炭素原子の2p軌道にほぼ局在化していることが実験的に明らかにした。また、4員環の中心にring critical pointが見られ、2つのラジカルの間に結合がないことを示すことができた。 2. テトラアザポルフィリンの構造解析: 当該研究領域のメンバーと共同研究で、結晶溶媒を多く含むために高精度な結晶構造解析が困難にあった、中心にリン原子が結合したテトラアザポルフィリン誘導体の構造解析を行った。その結果、激しく乱れた溶媒分子も含め解析に成功した。 3. ジブロモジシレンとNHCの反応生成物の構造解析: 空気中で不安定で構造および組成未知なジブロモジシレン-NHCの反応生成物微小結晶(0.14 x 0.03 x 0.01 mm)の構造解析に成功した。結晶のハンドリングには、顕微鏡横に導入した真空ライン等の不安定試料ハンドリングシステムを活用した。これによって、ハンドリングが困難なため、解析に堪える回折データ取得が困難であった、不安定微小結晶の測定と解析が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イメージングプレートを検出器としたX線回折装置にAgターゲットを導入し、吸収の少ない条件下で実験を行う予定であったが、当該装置に故障が相次ぎH25年度内に、この装置を利用した測定が行えなかった。一方、試料のハンドリング環境の整備が順調に進んでおり、成果に結び付けることができた。 MoKa線を用いた実験ではあるが、微小な結晶を利用して、ビラジカル種の不対電子が占有している軌道を観測することに成功した。この測定およびデータ処理手法を用いて今後の研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度に行えなかった、Agターゲットによる実験を行い測定条件を最適化する。良好な測定ができるようであれば、光照射による、HOMOの電子密度の減少、LUMOの電子密度増加をとらえ、HOMO-LUMOの分布を観測する手法開発を目指す。
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Research Products
(14 results)