2013 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスホルモン曝露に伴うシナプス可塑性障害の分子メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
25110728
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
祖父江 憲治 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 副学長 (20112047)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大脳発達 / ストレス / シナプス / 細胞骨格 / PSD |
Research Abstract |
ストレス/ストレスホルモン(グルココルチコイド)曝露は、大脳構築・神経回路網形成からシナプス形成に至る障害を来たし、うつ病・不安障害発症の重要な要因となっている。本研究はストレスホルモン曝露によるシナプス可塑性障害の分子メカニズムを解明し、うつ病・不安障害の分子基盤確立を目的とする。具体的には、研究代表者らが確立したストレスホルモンの混在しない新規神経細胞培養系と遺伝子欠損モデルマウスを用いて、ストレスホルモン曝露によるシナプス可塑性障害について関与するアクチン細胞骨格群とPSD蛋白質の発現・機能制御と分子構築からシナプスダイナミクスについての解析を行っている。具体的には、カルデスモンを初めとするアクチン細胞骨格群とPSD-Zip70を中心とするPSD蛋白質群に関して、ストレス/ストレスホルモン曝露によるシナプス脆弱性の分子メカニズムを解析している。また新規神経細胞培養系を用いた網羅的遺伝子解析により、ストレスホルモン曝露によりエピゲノム制御を受けるストレス関連標的遺伝子群の検索とシナプス可塑性障害への関与を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの成果を以下に列挙する。 1)新規に開発した神経細胞培養系を用いて、ストレスホルモン曝露によるシナプス形成への影響を解析した。まず、シナプスにおけるLTP形成にはスパイン肥大化・アクチンフィラメントのスパイン集積とAMPA受容体のシナプス後部への表出が必須である。LTP誘導によりカルデスモンのスパイン集積とカルデスモンによるスパイン内アクチンフィラメントの安定化の結果、スパイン肥大化が起こることを明らかにした。次いで、ストレスホルモン曝露によるスパイン脆弱性は、ストレスホルモン曝露に伴う転写レベルでのカルデスモン発現抑制によりアクチンフィラメント不安定化が起こる為であることを解明した。 2)カルデスモンのスパインダイナミクスへの関与をさらに解析する為、前脳特異的にカルデスモン遺伝子欠損を示すコンディショニングマウスを作製した。現在、解析中である。 3)申請者らが発見したPSD蛋白質、PSD-Zip70はこれまでのin vitroの解析で、スパイン成熟化に関与していることを明らかにしている。そこで、PSD-Zip70遺伝子欠損マウスを作製し、in vivoとin vitroの両面からPSD-Zip70機能の解析を行った。この結果、PSD-Zip70はPDZ-GEFとSPARによるRap2活性抑制の中軸を形成すること、PSD-Zip70欠損により神経細胞のRap2活性が亢進し、スパイン成熟化抑制とLTD・depotentiationを来たすことを見い出した。 4)omega-3多価不飽和脂肪酸であるDHAは、神経突起伸長・シナプス(スパイン)形成を亢進すること、このDHA作用はERK、Akt、CREBを始めとしたシグナル伝達を介することを明らかにした。現在、分子メカニズムの詳細を解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレスホルモン曝露によるシナプス可塑性障害における分子メカニズムを中心としたアクチン細胞骨格解析 1)ストレスホルモン曝露によるシナプス可塑性障害におけるカルデスモン関与の解析―新規神経細胞培養(分散・スライス培養)系を用いストレスホルモン曝露によるカルデスモン発現制御とシナプス可塑性障害関与のメカニズムを細胞生物学的手法と神経生理学的手法で解析。カルデスモンのコンディショニング遺伝子欠損マウスを用いストレス/ストレスホルモン曝露による神経回路網形成とシナプス可塑性障害および行動異常出現へのカルデスモン関与をin vitroとvivoで解析。 2)PSD-Zip70によるシナプス成熟化の分子メカニズムとストレスホルモン曝露によるシナプス可塑性障害の解析-PSD-Zip70によるRap2特異的活性化制御とシナプス成熟化をPSD-Zip70遺伝子欠損マウスを用い解析。PSD-Zip70はPDZ-GEFとSPARとの相互作用によりシナプス成熟化に関与している事を見出し済。またPSD-Zip70遺伝子欠損マウスはストレスに対する情動反応が低下しており同上マウスを用い情動反応の分子メカニズムとストレス/ストレスホルモン曝露によるシナプス可塑性障害へのPSD-Zip70関与を解析。 3)ストレスホルモン曝露によるシナプス(スパイン)脆弱化へのDHA防御効果とメカニズム解析。 4)ストレス関連遺伝子の検索-新規神経細胞培養系を用いた長期ストレスホルモン曝露により500種以上の遺伝子群が発現変化する事を見出済(ストレス関連遺伝子群)。このストレス関連遺伝子群の中で長期ストレスホルモン曝露によりエピゲノム制御を受け発現変化する遺伝子群を検索、シナプス形成に関与する遺伝子群(標的ストレス関連遺伝子群)を選別、新規神経細胞培養系を用いストレスホルモン曝露によるシナプス可塑性障害の分子メカニズムを解析。
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Research Products
(10 results)