2013 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症モデルにおける神経回路の動作原理
Publicly Offered Research
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
25110732
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
和氣 弘明 基礎生物学研究所, 光脳回路研究部門, 助教 (90455220)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 髄鞘 / オリゴデンドロサイト / 学習障害 |
Research Abstract |
髄鞘化された軸索は中枢神経系で白質を構成し、脳の多領域間を結ぶケーブルとしての役割を果たすことから、効率的な情報処理に極めて重要な働きをしていると考えられている。 髄鞘関連タンパク質による髄鞘の制御破綻が学習異常をもたらすかを検証するためにPLP1の過剰発現マウスを用いて学習過程の神経回路基盤を調べた。PLP1は髄鞘を構成する主要なタンパク質の1つであり、このタンパク質を過剰発現したPLP-tgマウスは2か月齢でパラノードの構造異常に伴う軽度の神経伝導速度の低下と不安様行動を示すことが報告されている。 髄鞘の恒常性破綻による神経伝導速度の低下が原因となっておきる行動異常がどのような神経回路基盤で起こるのかを検証するため、我々はカルシウム感受性蛍光タンパク質をコードする遺伝子をアデノ随伴ウイルス接種により大脳皮質運動野第2/3 層の神経細胞へ導入し、前肢レバー引きタスクによる覚醒下運動学習課題施行中に2 光子顕微鏡を用いて神経細胞の発火パターンを評価した。さらに運動学習による白質の変化を評価するため髄鞘関連タンパク質の変化をreal-time PCR法で検出した。 PLP-tgは、正常群に比べ学習効率が低く、レバー引きに関連しない神経細胞の発火頻度(自発発火頻度)が増加していた。一方、両群間においてレバー引きに関連する神経細胞の発火頻度だけでなく、麻酔下での神経細胞活動にも違いを認めなかったので、自発発火頻度は学習行動下でのみ増加することが示唆された。髄鞘関連タンパク質発現は正常群では学習に伴い有意に変化するのに対し、PLP-tgでは有意な発現変化を認めなかった。 これらの結果から髄鞘の恒常性破綻は学習に伴う髄鞘化の制御機能を損ない、情報伝達におけるシナプスへの入力の同期性の障害が不適切なタイミングでの出力の増加をもたらすため、自発発火頻度が上昇し学習障害を引き起こすと考えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
髄鞘の恒常性が損なわれている動物における学習障害の神経回路基盤を神経活動を可視化することによって行い、その解析がほぼ修了している。また学習に伴う髄鞘関連タンパク質発現の変化もrealtime PCR法によって行い、変化を検出することができた。研究計画の順序は遺伝子改変動物の搬入順序によって変更を認めたが、おおむね順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
統合失調症モデルとしてα-カルモジュリンキナーゼのヘテロ欠損マウスおよびSchnurri-2 欠損マウスを用いて認知学習課題を行い、認知運動学習課題下における2光子顕微鏡をもちいたin vivo 長期イメージングを組み合わせることにより行動異常と神経回路動作原理を遺伝異常のあるマウスを用いて調べることを可能にする。蛍光タンパク質は個体にアデノ随伴ウィルスを用いて導入する。この方法を用いて、統合失調症モデルにおいて、認知運動学習課題下で、同一個体の同一部位をイメージングすることにより1)神経細胞、シナプスの発火パターンの解析、2)電気生理学的手法を用いて入出力相関を解析、3)神経伝導速度の活動電位の伝搬に及ぼす影響と神経活動の同期性の相関、その消失による行動異常との相関を解析する。つまり入力の神経細胞およびシナプスの同期性の消失による非特異的な興奮性の増加による不適切な出力確率の増加を検討する。
|
Research Products
(4 results)
-
-
-
[Presentation] Disruption of myelin homeostatsis impairs motor learning2013
Author(s)
1. Ryohei Akiyoshi, Hiroaki Wake, Daisuke Kato, Yasuyo H Tanaka, Yoshito Masamizu, Riichiro Hira, Yasuhiro Tanaka, Fuki Ohkubo, Philip R Lee, R Douglas Fields, Junichi Nabekura, Masanori Matsuzaki
Organizer
Neuroscience 2013. Society for Neuroscience
Place of Presentation
Sandiego, USA
Year and Date
20131109-20131113
-