2013 Fiscal Year Annual Research Report
近視難聴合併症とシナプス病態の関連の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
25110736
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
有賀 純 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10232076)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シナプス形成 / 疾患モデル動物 / 感覚障害 / 遺伝子ターゲッティング / シナプス膜タンパク質 / 神経回路形成 / 神経栄養因子 / 高次脳機能 |
Research Abstract |
請者はこれまでに脊椎動物のLRR膜タンパク質と高次脳機能の関連に注目して、その1グループであるSlitrkファミリーを世界に先駆けて報告し、主にノックアウトマウスの解析によりその生物学的意義についての研究を進めてきた。その過程でSlitrk6が内耳の神経回路網形成に重要な役割を持つこと、Slitrk6欠損マウスは感音性難聴のモデルマウスとなること、Slitrkファミリータンパク質にはシナプス誘導活性があることを報告した。最近、SLITRK6のナンセンス変異が、難聴・近視合併症の患者を含む独立の3家系で発見されたとの連絡を共同研究者より受け、応募者がSlitrk6欠損マウスの眼の表現型を解析したところ、視軸長の増加が確認され、このマウスが難聴・近視合併症の疾患モデルとなることが明らかとなった。このマウスでは生後発達過程での網膜の高度な感覚受容に特化したリボンシナプスの形成が遅延していた。これらの成果を誌上発表・プレス発表した(Tekin et al., J. Clin. Invest. 2013;"近視と難聴の合併症の原因遺伝子「SLITRK6」を発見" http://www.riken.jp/pr/press/2013/20130402_1/ )。これらの成果を受けて、Slitrk6変異マウスのリボンシナプス微細形態・シナプス機能の評価を更に進めた。引き続き「Slitrk6のリボンシナプス誘導の分子メカニズム」と「Slitrk欠損動物を用いたシナプス病態の改善法」について研究計画を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界初となる近視難聴合併症の原因遺伝子ならびに疾患モデル動物を誌上報告できた点で、大きな成果が挙げられたと考えている。また、新たなシナプス膜タンパク質の分子機能と生理機能を明らかにすることができた(投稿中)。 近視の発症メカニズムそれ自体についてもいくつかの先行的な研究があるのみで、仮説が定着している状況とは言い難い。本研究は実験操作、遺伝的解析が比較的容易なげっ歯類モデル動物で近視の原因解析が行えるため、遺伝子レベルから機能異常まで一貫した解析が行える。 リボンシナプスの形成メカニズムとその機能異常に関連した病態はこれまでにほとんど知られておらず、リボンシナプスの生理学的意義の解明についても貢献できる可能性がある。 本研究の遂行により、近視と難聴という非常に頻度の高い感覚障害について、新たな発症メカニズムを解明・提唱できるものと予想する。このことは、医学的、社会的にも非常に大きな貢献となり、治療と対処を対象とする研究分野や神経組織の再生の研究にも大きな波及効果を与える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の点を中心に解析を進める。 1. Slitrk6のリボンシナプス誘導の分子メカニズムの解明。a)受容体型タンパク質チロシン脱リン酸化酵素(Ptpr)との相互作用の検討。b)ニューロトロフィンシグナリングとの関連の解明。c)プロテオーム解析によるSlitrk6の分子作用機序の検討。d)新たなシナプス誘導アッセイ系を用いたSlitrk6のシナプス誘導活性の検討。e)遺伝学的手法を用いたPtpr, ニューロトロフィンシグナリングとの相互作用の検討。f)Slitrkタンパク質の機能を変化させる低分子化合物の探索。 2. Slitrk欠損動物を用いたシナプス病態の改善法の検討。a)ウイルスベクターを用いた分子ツールの発現。b)低分子化合物の投与による影響の評価。c)細胞移植による機能改善の評価。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] SLITRK6 mutations cause myopia and deafness in humans and mice.2013
Author(s)
Tekin M, Chioza BA, Matsumoto Y, Diaz-Horta O, Cross HE, Duman D, Kokotas H, Moore-Barton HL, Sakoori K, Ota M, Odaka YS, Foster II J, Cengiz FB, Tokgoz-Yilmaz S, Tekeli O, Grigoriadou M, Petersen MB, Sreekantan-Nair A, Gurtz K, Xia X-J, Pandya A, Patton MA, Young JI, Aruga J, Crosby AH
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Journal Title
J. Clin. Invest.
Volume: 123
Pages: 2094-2102
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Roles of LRR transmembrane proteins in hippocampal inhibitory neural circuit formation2013
Author(s)
1. Aruga, J., Tomioka, N.H., Miyamoto, H., Hatayama, M., Matsumoto, Y., Yoshikawa, T., Yamakawa, K.
Organizer
Cold Spring Harbor Laboratory Wiring the Brain Meeting
Place of Presentation
New York(USA)
Year and Date
20130718-20130722
Invited
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