2013 Fiscal Year Annual Research Report
免疫応答における接着制御分子の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Analysis and synthesis of multi-dimensional immune organ network |
Project/Area Number |
25111509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
片桐 晃子 北里大学, 理学部, 教授 (00322157)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 免疫動態 / インテグリン / シグナル伝達 / Rap1 / Mst1 |
Research Abstract |
リンパ球がインテグリンを介して免疫の場を構成する細胞や基質に接着することは、リンパ球の分化、抗原応答の制御、自己寛容の誘導に重要な役割を果たしている。インテグリンを介する接着はRap1シグナルで制御されており、このシグナルカスケードを解明することは、免疫動態の制御機構を理解する上で重要である。Rap1は下流標的分子RAPL-Mst1を介して、細胞極性を誘導するとともに、前方にLFA-1クラスターを誘導することでLFA-1を介する接着・遊走を促進することを報告してきた。本年度は、LFA-1の極性輸送に関与する分子として、Rab family 低分子量Gタンパク質のRab13を同定するとともに、Mst1リン酸化酵素の下流標的基質を解明し、Mst1とRab13が協調してLFA-1の接着活性を上昇させる機構を明らかにした。すなわち、ケモカイン刺激により、Rap1依存性にMst1のリン酸化酵素は活性が上昇し、Rab13GEF (GTP/GDP交換因子)であるDENND1Cのリン酸化が起こると、DENND1C のGEF活性が上昇しRab13の活性化が生じること、活性型Rab13-GTPはMst1-RAPLを介してLFA-1をアクチン依存性に前方へ極性輸送することでLFA-1クラスターが誘導されることを明らかにした。また、この過程でMst1はVASPの157番目のセリンをリン酸化することでアクチン繊維の伸長・束化を促進し、LFA-1の前方輸送に貢献することやRab13-GTPはモーターたんぱく質Myosin Vaをリクルートすることでアクチンケーブル上を移動することを明らかにした。さらに、Rab13欠損マウスを作成し、このマウス由来のリンパ球はLFA-1依存性の接着・遊走が低下するとともに、ホーミング能が低下し、リンパ組織が低形成となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンパ球動態に重要なLFA-1の接着活性を制御するRap1-RAPL-Mst1シグナルの下流分子の解明を目指してきた。昨年度までにLFA-1クラスター形成にRab13が関与することを見出していたが、ケモカイン刺激の下流でRab13活性化が生じる分子機構、Mst1とRab13の関連やそれらがどのようにLFA-1クラスターを誘導するのかという仕組みは明らかになっていなかった。本年度は、Mst1リン酸化酵素の下流基質として、Rab13GEFである DENND1Cおよびアクチン伸長促進因子のVASPを同定し、ケモカイン刺激によるMst1を介するRab13活性化機構を解明するとともに、Mst1がアクチン細胞骨格系の発達に関与する機構を突き止めた。Mst1が LFA-1小胞を前方へ輸送することで、リンパ球の接着・遊走を誘導している分子機構を解明することができた。また、本年度は作製中だったRab13欠損マウスを解析する段階まで到達し、Rab13がケモカイン刺激によって形成されるLFA-1活性化およびリンパ組織へのホーミングに必須であることが判明した。これらを論文にまとめ投稿に至っている。 また、Rap1シグナルは、RAPL-Mst1を介さず、LFA-1の構造変化を誘導することを見出し、この機構としてLFA-1の細胞内領域に会合する細胞骨格系filaminのRap1活性化による解除の可能性を検討している。本年度はRap1がLFA-1とfilaminとの会合に与える影響を観察するため、Rap1a,bダブルノックダウン細胞を作成した。またfilaminの接着カスケードへの影響をprimary リンパ球で確かめるために、filamina conditional knockout miceを導入し、CD4-creTg miceとの掛け合わせを開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
1) インテグリン制御分子Rab13による免疫システムの調節:a) Rab13 knockout mice を用いて、リンパ球の接着・遊走が低下することを見出している。このマウスでは胸腺組織の低形成も認めており、一次リンパ組織を構成する場との接着・遊走がリンパ球の分化へどのような影響を与えるのか明らかにする。b)Rab13欠損樹状細胞のインテグリンを介する接着は顕著に低下していることを見出している。樹状細胞のサブセット形成や、リンパ節への移動、T細胞活性化・分化誘導機能に対するRab13欠損の影響を検討する。c) OT-IIマウスと掛け合わせており、このマウス由来のT細胞を用いて、骨髄由来樹状細胞を抗原提示細胞として用いて、抗原応答への影響を検討する。またin vitroでplaner membrane上での免疫シナプスの形成・消失過程への影響を検討する。 2)接着カスケード制御機構の解析:a) Rap1a/b, Filamin, conditionalノックアウトマウス(すでに作製済み)由来の primaryリンパ球を、血流と同じ速さで血管内皮細胞上を流し、リンパ球と血管内皮細胞間の相互作用を、Metamorphソフトウエアを用いて定量解析する。また、生体顕微鏡を用いて、腸管リンパ節内のHEV上での接着カスケード反応を同様に解析する。接着カスケードにおけるRap1およびfilaminの役割を、primaryリンパ球を用いて明らかにする。b) ケモカイン刺激による「arrest」にRap1活性化が必須であることを報告しているが、Rap1活性化の機構は不明であった。昨年度はケモカインの下流でRap1を活性化するRap1GEFの同定に成功したので、このノックアウトマウスを用いて(作製中)、リンパ球動態への影響を検討する。またケモカインによるRap1GEFの活性化の分子機構を解明する。
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