2013 Fiscal Year Annual Research Report
胸腺Tregニッチ仮説に基づいた成熟Treg“卒業証書分子”の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Analysis and synthesis of multi-dimensional immune organ network |
Project/Area Number |
25111515
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
深澤 太郎 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 特別研究員 (10565774)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 制御性T細胞 / 胸腺 |
Research Abstract |
TNFα/ RelAダブルノックアウト(TAKO)マウスでみられる、胸腺からの成熟Tregの流出不全は、Treg側ではなく胸腺環境側でRelAを欠損することに因る。本研究ではこの、胸腺環境においてRelA依存に発現する“流出シグナル”の同定と、この流出シグナルを受容した成熟Tregが胸腺環境より流出する際に必要とする機能分子(“卒業証書分子”)の同定を試みている。 平成25年度は以下のことを行った。1、TAKOと対照群(TNFα単独KO)胸腺より胸腺上皮と血球系ストロマ細胞(樹状細胞、マクロファージ等)とをそれぞれ単離し、それぞれの発現遺伝子プロファイルをマイクロアレイを用い作成した。2、前年度までに得られた、IL-7RαがTregの成熟マーカーになるという知見をもとに、TAKOと対照群胸腺より成熟Treg分画を単離し、発現遺伝子プロファイルを作成した。3、RelAを必要とするのは胸腺環境側のどの細胞種かを絞り込むため、デオキシグアノシン処理したTAKO胎児胸腺をヌードマウスに移植し、末梢にTregが現れるか検討を行った。この結果、TAKO移植群で対照群と同頻度(統計的有意差なし)のTregを末梢に認めた。この末梢Treg分画中の胸腺由来Treg(nTreg)の頻度を、nTregマーカーとして報告されているNeuropilin-1染色により検討したところ、TAKO移植群と対照群双方で約6割程度のNeuropilin-1陽性Tregを認めた(頻度に統計的有意差なし)。このことから、胸腺上皮でRelAを欠損しても胸腺Tregの流出は起こることがわかった。この結果は、成熟Treg流出に際して胸腺上皮以外に重要な役割をもつ細胞種が存在することを意味する。本研究は胸腺環境の更なる理解の礎となるものと期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、前項1、TA-KOマウスと対照マウスより胸腺環境側の細胞種(胸腺上皮・血球系ストロマ細胞)の単離とDNAマイクロアレイによる発現遺伝子プロファイルの作成と、2、成熟Treg分画の発現遺伝子プロファイルの作成、3、胸腺環境側の細胞種の絞り込みを予定していた。 1・2については、実験に必要な細胞数のプールに時間がかかるため、3の結果を待たずに実験を進めた。これについては平成25年度中に予定していた発現遺伝子プロファイルの作成が終わった。 3については、まずfoxn1-cre/rela-floxedマウスを作出し解析を行ったが、このマウスではTA-KOマウスのTreg流出不全の表現型は再現されなかった。しかしながらこのマウスでは、胸腺上皮でのrelaの組み換え効率が悪かった。そこで、次にデオキシグアノシン(dGuo)処理胎児胸腺移植実験を行い、dGuo処理TA-KO胎児胸腺と対照群胎児胸腺を移植したマウスで、胸腺Tregの流出に差異はないという結果を得た。これより、成熟Tregの流出に際しRelA依存性を示す胸腺環境側の細胞種に胸腺上皮は含まれないことが分かった。この細胞種の絞り込みについても、平成25年度中に予定していた部分は終了した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に得られた結果より胸腺上皮は胸腺環境側の細胞種の候補から除外されることから、研究実績の概要1で作成したうち血球系ストロマ細胞の遺伝子プロファイルを用いTA-KOと対照群とで発現の異なる遺伝子の探索を行う。差異の見られた遺伝子について、定量的RT-PCR法や免疫染色による確認を行う。一方で、胸腺環境側細胞のさらなる絞り込みのために、各種細胞種特異的プロモーターでCreをドライブするマウス系統とrela-floxedマウス系統から、各種細胞種特異的RelA欠損マウスの作成の検討を行う。このマウスにおいて、胸腺からの成熟Tregの流出不全の程度を、胸腺Treg分画のIL-7Rα発現や末梢でのTreg分画のNeuropilin-1発現により解析する。時間的に可能であれば、絞り込まれた細胞種に近縁の培養細胞株に前述のスクリーニングで差の見られた遺伝子を強制発現させ、これとTA-KOマウス胸腺成熟Tregとを共培養し、このTregでの遺伝子発現プロファイルがTNF単独KOの胸腺成熟Tregでのプロファイルに近づくかの検討を、前項2で作成した遺伝子プロファイルを用いて行う。
|