2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞接触センサーから直接伝わる細胞骨格編集シグナルの研究
Publicly Offered Research
Project Area | Cross-talk between moving cells and microenvironment as a basis of emerging order in multicellular systems |
Project/Area Number |
25111702
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
栗山 正 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30398226)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 集団的細胞移動 / 神経提細胞 |
Research Abstract |
アフリカツメガエルの神経提細胞を用いた細胞移動の研究において、我々は集団を維持するための細胞接着と移動を促進するための上皮間充識遷移(EMT)がどのようなバランスで行われているのかについて調べた。EMTを促進するシグナルの候補としてLPAとその受容体であるLPAR2が神経提細胞の移動に関わっていることを見出した。LPAR2遺伝子の阻害によりN-cadherinによる神経提細胞同士の細胞接着が異常に安定化することを見出した。これまでin vitroで細胞が単独の細胞にまでバラバラになってもin vivoではこのような細胞も集団的に移動するので細胞接着の制御が集団的細胞移動に果たす役割は分かっていなかった。我々は微小流路チップと細胞誘引するケモカインの働きを利用して集団で移動する細胞が立体障壁に直面するとどのように振舞うかを観察した。すると正常な神経提細胞が細胞同士の位置関係を変えて集団の形を変形させ細胞1つ分の流路を進んでいくのに対し、LPAR2をノックダウンした細胞は細胞接着の再編成を起こすことができなかった。この細胞の行動を数理的に解析した結果、前者は液体のように振る舞い、後者は固体のようにふるまう粒子とみることができることが分かった。さらにシグナルの活性化が移動の前後で起こることから、「神経提細胞はLPAシグナルの活性化に伴い、EMTの一部として固体から液体への相転移に似た細胞行動の変化を起こし、生体における障害物に対応している」と結論づけた。現在は細胞接着の制御機構をさらに詳細に調べ、ゆらぎによって捕らえられない接着装置の構造を捉える様々な方法を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
N-cadherinと複合体をつくるタンパク質をプロテオミクス的な手法を用いて単離・同定し、その細胞接着に対する役割を解析している予定だったが、タンパク質の精製・分離が思いのほかうまく行かず、同定にはいたらなかった。しかしながら候補分子を試す方法でN-cadherin分子の制御に係る分子を数多く見出している。可能な限り網羅的なアプローチも取りたいが、候補の中から機能を解析する分子を選び全体の計画を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにLPAR2分子と相互作用する分子を多く発見している。 1.Lipoma preferred partner(LPP) この分子は細胞接着サイトと核をシャトルするタンパクであり、LPAR2と直接相互作用することをすでに明らかにしている。LPPのノックダウンによって細胞接着が解除されることを見出しているため、細胞接着を制御するカドヘリン細胞内リンカータンパクとしての役割を検討したい。具体的には免疫染色によって細胞接着装置と細胞骨格をつなぐリンカーの位置にこのタンパクが見出されるかが問題となる。これを明らかにするためにN-cadherin細胞接着を擬似的にビーズなどの担体と細胞の間に作らせ、細胞にストレスを与えることで細胞接着因子と細胞骨格の接合部分を直接ライブイメージングで捉える方法を探索している。 2.イメージング手法の開発とイメージ処理方法の共同研究 細胞接着と細胞基質接着に使われるタンパク質を似ている。この混同を避けることがイメージングに欠かせないと考えているので観察面に細胞接着を作り、非観察面に基質接着面を置く方法を工夫することで動的な構造の捕捉に成功した。しかし一見するとランダムに細胞骨格が動いているだけのようにも見える。この中から規則性を見出すことが構造の解明につながると考えているので領域の研究者と協力し、オプティカルフローによって解析する方向性を打ち出した。 3.リン酸化制御分子の解析 LPAR2分子のリン酸化が神経提細胞移動に関与していることを見出した。しかしこれまでにLPAR2分子の細胞内ドメインにあるセリン残基のリン酸化に関与している分子は報告されていない。発現パターンから候補を絞り込み神経提細胞移動に変化があるかどうかを調べたい。
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Research Products
(3 results)