2013 Fiscal Year Annual Research Report
器官として移動する胸腺・副甲状腺の駆動力源を周囲の間葉系細胞との関係性から探る
Publicly Offered Research
Project Area | Cross-talk between moving cells and microenvironment as a basis of emerging order in multicellular systems |
Project/Area Number |
25111720
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
片岡 浩介 横浜市立大学, その他の研究科, 准教授 (20262074)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 遺伝子工学 |
Research Abstract |
胸腺・副甲状腺は、発生の過程で器官全体のインテグリティを保ったままで、それを取り囲む間充織細胞群の中を移動する。この際、移動の駆動力の発生源や方向性を決める分子機構などはほとんどわかっていない。本研究では、任意の細胞に接触した細胞を遺伝的にラベルする方法を開発し、これをマウス個体に適用して、個体内で時系列にそって胸腺・副甲状腺と間充織細胞の位置関係を明らかにする。 本年度はまず、この方法の開発に必要なNotch受容体の線虫ホモログであるLin12の細胞外領域のcDNAをクローン化し、核移行型Creレコンビナーゼとの融合タンパク質の発現ベクターの構築を行ったが、Lin12、Creともにクローニングの際に大腸菌に対してある程度の毒性を示し、さらにこれらの融合遺伝子となると、突然変異を誘発することなしにクローニングすることは極めて困難であることが判明した。このため、系の構築に極めて大幅な遅れを生じた。しかしその後、この困難はCreのかわりにFLPリコンビナーゼを用いることによって回避することができた。ただし、Lin12の膜貫通領域が哺乳類細胞内でプロテアーゼ切断されにくいことが判明したので、この領域を哺乳類のNotch2と置き換える工夫をした。さらに、CreからFLPへの変更に伴って必要となる発現ベクター類の構築(FRTカセットなど)も行った。また、線虫Deltaホモログ(Lag2, Apx1)およびそれらと哺乳類Jagged1との融合タンパク質発現ベクターなどの構築も行った。以上の組換えベクター類が、哺乳動物の培養細胞系で期待される発現と活性を持つことも確認した。これらのツールを利用して、接触した細胞を遺伝的にラベルできるかどうか、また、線虫のNotch-Deltaホモログ(Lin12-Nag2, Apx1)が、哺乳動物の系と互いに干渉しないかどうかを検証する段階に到達した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の遂行に必須な「任意の細胞と隣接した細胞を遺伝的にラベルする方法の開発」において、難クローニング性の遺伝子を複数種類取り扱うことになり、これらを組み合わせて用いる発現ベクターの構築に際して、クローニングできない、あるいはクローニングに際して予期しない突然変異の導入を避けられない、などの数多くの困難に直面し、その乗り越えや回避のための工夫(大腸菌株の選択や培養条件の検討、ベクターの選択、クローニング戦略や手法の工夫など多数)に多大な時間を要したため。ただし現在は、この予想外の困難は乗り越えることができ、次の段階へと進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
「任意の細胞と隣接した細胞を遺伝的にラベルする方法の開発」について、構築した融合タンパク質類が、培養細胞レベルで期待されるような挙動を示すかどうかを検証する。また、この系では線虫のNotch-Delta系ホモログを用いており、これが哺乳類のNotch-Delta系と互いに干渉しないことが成功の前提であるので、この確認を急ぐ。干渉するようであれば、それを回避するような点変異を導入するなどの工夫が必要となり、完成にはさらなる時間を要することになる可能性が出てくる。 また、胎児期のマウスを用いた胸腺・副甲状腺原基と間葉系細胞の免疫染色による観察も行う。このために必要な特異抗体などはおおよそ準備した。
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