2013 Fiscal Year Annual Research Report
中心体数の制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cilium-centrosome system regulating biosignal flows |
Project/Area Number |
25113509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
荒川 聡子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (90415159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中心体 / オートファジー |
Research Abstract |
多くのがん細胞の特徴の1つに、過剰な中心体の存在がある。中心体が過剰に存在すると、染色体の分離異常を促し、染色体の不安定性を介して発癌やがんの悪性化が惹起される。この為、中心体数の制御は、生体の恒常性維持にとって極めて重要である。申請者は、このような中心体数の制御機構に関心を持ち、(1)中心体の合成・分解のバランス、(2)他のオルガネラによる制御、(3)ケミカルバイオロジーを用いた制御系探索の3種類の方法を介して中心体の制御機構に迫ろうとしている。 はじめに、申請者は、中心体数を制御するためにはその合成と分解のバランスが重要であると考え、そこにオートファジーの制御が働いているのではないか、という点に着目し研究を進めた。オートファジーはユビキチン・プロテアソーム系と並び、細胞内の主要な分解メカニズムである。その実行に必要な分子としてAtg5が知られており、隔離膜からオートファゴソームを形成する過程に必要とされる。この遺伝子を欠損したマウス線維芽細胞において、中心体数を計測したところ、細胞全体の15パーセントから20パーセントの細胞において、中心体が3個以上みられる、ということがγチューブリンの染色からわかった。 次に、ライソソームをLamp2によって染色し共焦点顕微鏡で観察したところ、中心体とライソソームの共局在が野生型の細胞において多くみられ、オートファジーによって、中心体の複製を調節している可能性が考えられた。 また、ケミカルバイオロジーの手法を用いて低分子化合物ライブラリーをスクリーニングし、中心体を制御できる化合物の同定に成功した。この化合物を投与すると、複数の中心体が1カ所に集約されるようになる。現在は、この化合物の標的分子を探索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請では、(1)中心体の合成分解のバランス、(2)他のオルガネラによる制御、(3)ケミカルバイオロジーを用いた中心体制御機構解析、の3つの方向から、中心体制御機構の解明を目指している。 (1)中心体の合成分解のバランスに関しては、オートファジーの変調によって一細胞あたりの中心体数が増加する事を見出した。これは、細胞内の中心体数を制御するのにオートファジーによる中心体の分解機構が関わっている事を示している。現在、中心体がオートファジーによって消化されるときに働く関連分子を明らかにしつつ有り、概ね予定通り研究は進行している。これらの研究成果を近く、論文投稿する予定である。 (2)他のオルガネラによる制御に関しては、すでにゴルジ体に局在する蛋白質の変調により、中心体数が変化する事を見出している。これに関して、より詳細な検討を加えるため、さらに実験を行う必要がある。 (3) ケミカルバイオロジーを用いた中心体制御機構解析に関しては、これまでにケミカルライブラリーの中から中心体制御化合物の同定に成功している。現在はその標的分子を解明しつつある段階であり、概ね予定通り研究は進行している。低分子化合物に結合する標的分子を同定する手技は、所属研究室において既に確立しており、順調に実験が進めば、標的分子の同定にさほどの時間は要さない見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)中心体の合成分解のバランスに関しては、中心体がオートファジーによって消化される詳細なメカニズムを明らかにする。具体的には、中心体がオートファジーされる時に必要な中心体を構成する分子やオートファジーの関連分子を同定する予定である。現在、候補となる分子の絞り込みを行なっているところである。これらの関連分子を同定した後に、それぞれの当該分子をノックダウンし、培養細胞で実際に中心体数が変化するか否かを検証していく予定である。 (2)他のオルガネラによる制御に関しては、ゴルジ体に局在する蛋白質のノックアウト細胞、およびノックアウトマウスを解析する予定である。これらの細胞、およびマウスはすでに所属研究室にて作成が進んでおり、現在実験に用いることができる段階になったところである。これらを用いて中心体数の変化がみられるかどうかを解析することにより、ゴルジ体による中心体制御機構への役割の一端を明らかにできるものと期待している。 (3) ケミカルバイオロジーを用いた中心体制御機構解析に関しては、すでに中心体を制御する低分子化合物を選定しており、その標的分子の同定を速やかに進める予定である。この標的分子について培養細胞上でノックダウンし、中心体数が変化するか否かを検証する予定である。また、選定している低分子化合物を、多中心体を持つ癌細胞に投与し、抗癌効果が認められるか否かについても検討していく。もし抗癌効果が認められた場合には、抗癌剤として化合物の最適化作業を行っていく予定である。
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Research Products
(9 results)