2013 Fiscal Year Annual Research Report
一次シリアからの情報発信
Publicly Offered Research
Project Area | Cilium-centrosome system regulating biosignal flows |
Project/Area Number |
25113511
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
池上 浩司 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20399687)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シリア / 情報伝達 / 小胞 / エクトソーム / エキソソーム |
Research Abstract |
本研究では、細胞の新しい情報発信手段として一次シリア先端からの小胞放出に着目した研究を展開している。今年度は、放出された小胞の観察法、定量法、単離法の確立につとめた。 観察法としては、蛍光タンパク質(mcherry)を融合させたソマトスタチン受容体3(Sstr3)を細胞に過剰発現させ、蛍光ライブセルイメージングにより放出の瞬間を直接観察する手法が確立した。 定量法については、mcherry-Sstr3を過剰発現させた細胞を用い、3種類の方法を検討した。培地に放出された小胞を蛍光分光光度計で直接測定する方法は検出感度以下であり有用ではなかった。培地中の小胞を超遠心(100,000 xG)で沈殿・濃縮させ、沈殿物に含まれるmcherry-Sstr3の量をウェスタンブロット法で検出する方法が高感度かつ定量性に優れる方法であった。また、フローサイトメトリーを用いて培地中の蛍光小胞を直接検出する方法も検討し、検出力がやや落ちるものの、小胞の数を定量できる方法として有用であることが分かった。 単離法については、タグを組み込んだSstr3を細胞に過剰発現させ、培地中に放出された小胞を特異的抗タグ抗体を用いたアフィニティ精製で単離する方法を検討したが、抗原に対する小胞の大きさが問題となり、期待どおりの結果を得られなかった。抗体を用いた免疫除去も検討したが、細胞への遺伝子導入効率が50%以下であるため有用ではなかった。最終的に、蛍光Sstr3を発現させた細胞を用いて、フローサイトメトリーで蛍光性の小胞を単離する方法を採用した。 世界的にまったく新しい「一次シリアからの情報発信」を研究するための基本的ツール、手法が確立した点で非常に重要な成果である。来年度はこれらの手法を用いて生理学的な解析に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「一次シリアからの情報発信」は世界的にも非常に新しい概念かつ研究テーマであり、研究を進めるうえでの確立した手法はない。細胞生物学、細胞生理学、生化学、分子生物学の様々な手法を思考錯誤しながら組み合わせ、トライアル・アンド・エラーを通して、最終的に基本的な方法(検出法、定量法、単離法)の決定にこぎ着けた。今後の研究において多少のチューンアップや最適化は必要であろうが、研究に必要な各種手法が大まかに決まった意義は非常に大きい。理想的には初年度にこれらの手法を用いて実際の生理学的研究に着手し、計画以上の進展を期待したが、新しい概念・研究テーマにおいて手法が確立した点は、おおむね順調な進展であると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に確立した一次シリア由来小胞の観察法、定量法、単離法を用いて、細胞生物学的解析に取り組む。具体的な推進方策は以下の3項目を計画している。 1)一次シリア由来小胞放出の刺激依存性の検証:一次シリアをもつ培養細胞を、各種刺激(浸透圧変化、血清濃度変化、グルコース濃度変化など)に暴露し、ライブイメージングで小胞放出の様子や放出頻度の変化などを捉える。さらに、培地中に放出された一次シリア由来小胞を比較定量する。研究が順調に進んだ場合、あるいは逆に上記の刺激に対し応答を示さなかった場合、一次シリアに局在するG蛋白質共役型受容体(GPCR)のリガンド処理に対する小胞放出変化についても検討する。 2)一次シリア由来小胞の生理活性の検証:一次シリア由来小胞を単離・精製し、得られた小胞を培養細胞に処理し、小胞の生理学的効果、生理活性などを検証する。実験系としては、繊毛輸送タンパク質(IFT88やKif3など)を機能阻害した細胞や、繊毛形成阻害剤(ciliobrevinなど)で処理した細胞に対して精製シリア由来小胞を投与し、細胞の挙動(形態変化、増殖能、移動能、各種ストレスに対する感受性や応答など)を検討する。 3)一次シリア由来小胞のオミックス解析:一次シリア由来小胞を単離・精製し、小胞に含まれるタンパク質をプロテオーム解析する。また、研究が順調に進んだ場合、あるいは逆にプロテーム解析がとん挫した場合、小胞を構成する脂質の組成についてもオミックス解析を行いたい。
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