2013 Fiscal Year Annual Research Report
一次シリア基底部における選択的拡散障壁・分子フィルター機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cilium-centrosome system regulating biosignal flows |
Project/Area Number |
25113515
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 敬宏 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 講師 (80423060)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 細胞膜 / 一次シリア / 拡散運動 |
Research Abstract |
本研究は、「一次シリア基底部の細胞膜にある選択的拡散障壁・分子フィルター機構」、すなわち、「一次シリアの細胞膜を、細胞体の細胞膜から隔てている境界構造の実体と、その構造が拡散障壁として、しかも、特定の分子の選択的な出入りを決めるフィルターとしてはたらくことにより、一次シリア全体の極性を維持し、その機能を制御する機構」の解明を目指している。 本年度は、以下の研究進捗があった。 1.ヒト網膜色素上皮由来のhTert-RPE-1細胞で、無血清培地での48時間培養、細胞密度約50%の条件では、細胞の上側と下側(カバーグラスに面した側)に形成される一次シリアの割合はほぼ同じで、構造全体の長さもほとんど変わらなかった。共焦点顕微鏡観察で、カバーグラスから一次シリアの基底部と先端部までの距離を定量したところ、基底部の32%、先端部の80%が300 nm以下の距離に存在することから、一次シリアへの分子の出入りは、全反射蛍光顕微鏡で観察可能であることが分かった。 2.拡散障壁の候補と考えられる分子(5種)について、免疫蛍光染色をおこなったところ、細胞の下側に形成された一次シリアの基底部でも、上側の一次シリアと同様な局在を示すことが分かった。 3.細胞の下側に形成された一次シリアを、全反射蛍光顕微鏡で可視化(マーカーはSmoothened-EGFP)し、不飽和リン脂質(DOPE)、スフィンゴ糖脂質(GM3)の蛍光アナログ1分子の2色同時観察をおこなったところ、一次シリア基底部には、1分子の脂質分子でも通り抜けられない拡散障壁が存在することが示唆された。 4.拡散障壁マーカー分子の生細胞超解像観察と、一次シリアに局在する、あるいは、一次シリアから排除される細胞膜分子の1分子観察(時間分解能0.1ミリ秒-数秒)を同時におこなうことができる顕微鏡システムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞膜と一次シリアの間に形成されるサブミクロンサイズの仕切りは、従来の顕微鏡法では回折限界(250 nm)のためその微細構造が観察できない。また、典型的な細胞膜分子の拡散を考えると、数10-数100 ミリ秒で移動できるサイズであるため、その拡散障壁としての機構、さらに、選択的な分子フィルターとしての機構を解明するためには、サブミリ秒時間分解能での1 分子イメジングが必須となる。そこで、1年目は、空間分解能20 nm の生細胞超解像(PALM)観察と、時間分解能0.1 ミリ秒、位置決め精度20 nm の高速1 蛍光分子観察を組み合わせた顕微鏡システムを構築し、ほぼ装置は完成した。また、一次シリアを形成させた細胞試料の調製・観察条件と、拡散障壁マーカー分子の選定を進め、本研究の作業仮説「一次シリア基底部の細胞膜にある選択的拡散障壁・分子フィルター機構」を次年度以降、本格的に検証するための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、1年目に開発した装置を用いて、以下の研究をおこなう。 1.一次シリア基底部における選択的拡散障壁・分子フィルター機構の解明 細胞膜と一次シリアを構造的に隔てている、細胞膜分子の拡散抑制機構を、「膜骨格フェンス効果」、「アンカード膜タンパク質ピケット効果」、「脂質ドメイン効果」の代表的な3つの仮説に分類し、それぞれの効果を与える分子群の生細胞超解像観察をおこなう。各拡散抑制機構の分子選択性を調べるためには、まず、脂質分子のコントロールとして蛍光リン脂質アナログ、膜貫通型受容体のコントロールとしてトランスフェリン受容体、その後、一次シリアに局在する分子(Smoothened、PDGF受容体など)、一次シリアから排除される分子(GPIアンカー型タンパク質など)の高速1蛍光分子観察(0.1ミリ秒-ビデオレート)を、超解像観察と同時におこない、それぞれの拡散障壁でどのように振る舞うか(排除/通過/トラップ)を明らかにする。 2.能動的一次シリア極性形成機構の解明 一次シリア基底部の拡散障壁が、特定の分子に対してはアフィニティが高く、これらの分子のみを特異的にトラップし、その後、微小管結合モータータンパク質依存的な極性輸送をおこなうことによって、一次シリアへの選択的な出入りを決めるフィルターとしてはたらいている可能性を調べる。低サンプリングレート(ビデオレート-数秒)の1蛍光分子追跡により、拡散障壁でのトラップから、キネシンファミリー依存的な一次シリア先端(+端)方向への極性輸送が開始する過程を追跡する。また、ダイニンファミリー依存的な根元方向(-端)への極性輸送の後、拡散障壁を通過して一次シリア外に出て行く過程が存在するかどうかを調べる。
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Research Products
(3 results)